world of...-side red- #03
「さぁ、って……」
適当にはぐらかすエリザベータの言葉を継いで、ナターリヤが静かな瞳で告げた。
「何が来ようと私たちは負けない。お前一人逃したところで、些末に過ぎないんだよ」
踵を返し、二人は歩き出した。
数歩行ったところで、急に助走と付けたかと思うと――
二人は、テラスから飛び降りた。
「!?」
驚いた女性は、思わずテラスの下を覗き込んだ。
すると、エリザベータとナターリヤは一台の車の上に降り立ち、車はすぐさまエンジンをかけて発進した。
「……なんて人たち」
そして、ライナとマリーは、エリザベータたちが乗った車を見て笑った。
「どうやら上手くいったみたいねぇ。さ、行きましょうか、マリーちゃん」
「はい」
「しっかり捕まっててね!」
ライナが跳躍し、落下地点に丁度車が走りこんでくる。
二人が天井に着地すると、そこが開き、四人は車内へと収まった。
大きく砂埃を立てながら、フランシスの運転のもと、彼女らは栄華の建物を後にした。
「は~い、みんなお疲れ様♪ど?収穫の方は」
「もうバッチリ!ナターリヤが見事にやってくれたわ」
フランシスの労いの言葉に、エリザベータが自慢げにVサインで答える。
彼女の目配せで、隣に居たナターリヤが口を開いた。
「あいつら、近々共同でウチに攻め入る気らしい。とんだ馬鹿だな」
「お、じゃあ今度やるのは防衛戦ってわけか」
「滅多にありませんからね。頑張らなくては」
「私も、久々に腕を振るう機会になるかしらねぇ~」
不吉な情報にも関わらず、車内の五人は笑いつつ、迎撃する気満々なのであった。
黒き姫君たちが、闇夜に帰っていく。
静寂の森に、鈴の音のような笑い声を木霊させながら。
to be continued...
作品名:world of...-side red- #03 作家名:三ノ宮 倖