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誤魔化しに綻んだ唇

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不定期的に虚言を紡ぎ始めることにした。
本当の名前は田中太郎なんですの次に年は21歳ですが来て、臨也さんは不吉の前兆を感じ取る。
生まれ持った性別は生物学上女ですが続いて、どうあやふやにしてしまおうかと策謀しているみたいだ。
実家は都会です等のプロフィールが最新で、ようやく動きようのない事態を把握したようだが。罪状を挙げつらねていく傍らに、言い訳と謝罪を並べ立てていく臨也さん。遅い。見事きれいに笑むことに成功しながら思う。来るべきではなかった今日が遂に訪れる。
実は僕は今折原臨也というひとと、の処で唇を大きな掌で覆われる。これからが肝心なんですと訴えながら恨まし気であろう視線を掻い潜られて己の大粒の塩辛い雫を、口元を抑えた手とは反対の方の人指し指で拭われた。
大体予想はつくけどさ、号泣するなら止めて置けばいいのにねと囁かれる。それは此方の台詞ですと返したくても、口元を抑え付けられ続けているので、まだまだ無理である。


神経を優しく撫でられるような慰められ方を、僕は初めて知ったのだ。こい、という単語を唇で小さく密やかに呟いてみてぼんやりと思う。

実感を今頃して、きっとそれをくれたひとに報告したら呆れられてしまうのは確実なので、やはり言わない。子供と大人の境界を彷徨う今の自分には、これが精一杯である。
しかしその後日。大人になった子供の、表情筋を制御して恋人の前では恰好つけでいたいという目論見が露見して、なんて互いに拙い遣り取りなのだろうと思った。





二人きりだと無表情な臨也さんと幾月も付き合っている。表情によって拒絶されているようで本当に付き合っているのか、偶に無性に一人で不安定になる。
一応縋るものとしては、意外にもたどたどしい接触から、僕の名前の呼び掛けに込められた温度から確かに伝わりくるものがあるのだが。


そう、彼が愛して止まない人間とは、どう足掻いてもこのような存在なんだもの。
だから中身が渦巻いていようとも、外見だけでも取り繕う努力を尽くさなければならない。怠れば絶対に、ひとから好かれはしないのだ。

それもあるが加えて、臨也さんも人間であるのが始末に悪過ぎると、やっぱり思う。
作品名:誤魔化しに綻んだ唇 作家名:じゃく