おわりの はじまり
街を上から眺めることのできる大きな窓から、晴れとも曇りともつかない白い光が室内に射す。
この街は晴れの日でも爽やかな青空を見ることは少なく、こういった白い日差しであることが多い。
強くもなく弱くもないその光は、ゆるゆると拡散し、室内で反射して、悪巧みを発信するはずのこの部屋を驚くほど白く浮かび上がらせていた。
まぶしいなぁ…。
朝日は夜の不浄なる生き物を浄化するというが、このただただ白い光も自分の悪巧みを浄化しているのではないか。
そんな気分になるほど、臨也はいつになく腑抜けていた。
新宿の彼の仕事である一室でパソコンを広げ、自分が主催を務めているチャットのログをぼんやりと眺める。
「田中太郎さん」
今、気になっている人物の名を口に出してみる。
ダラーズの創始者であり、自分がずっと探していた人。
よくもこんなにばかばかしくて面白いものを作ってくれた、と感動したものだ。
上も下も無い集団で『人間』がどのような動きを見せてくれるのか、まさに『人』を愛してやまないこの俺のために用意してくれたかのよう。
そう、自分は「田中太郎」に感謝している。
ネットで彼を観察していて、チャットで初めて彼と会話したときのことも覚えている。
「この人が」「この人こそがダラーズの創始者」、と。
チャットで使用している甘楽というキャラクターも、はじめからあんなにはじけた少女だったわけではない。
警戒も含め、はじめは彼と話すときは緊張し、まるで恋する少女のようにドキドキしていたものだ。
チャットでの彼の印象は「誠実」。
決して自分のような悪意を持った人間でも、適当に面白半分でいたずらしたという訳でもなさそうな人物。
彼は、本気であの組織を楽しもうとした人間だと。裏があるのではとも疑ったが、おおむね印象は変わらなかった。
彼を監視して、自分が人間観察に利用していた紀田正臣とつながりがあることを知った時には運命を感じた。
ねえ、田中太郎さん
君は心はココにあるんだろう?
なら来なよ、池袋に
俺のゲーム盤にさ