おかしな二人
あまりの痛みに身体が震え、涙が零れた。
アーサーさんはそんな私を無感情な目で一瞥したのち、強引にキスをした。
そして私をまた殴るのだ。首を絞められたときは本当に死ぬのではないかと思った。
自分勝手に動いて、一人で達した後、私の無造作に投げ捨てられていた手をギチギチと握り締めながら、今度は優しくキスをした。
そのキスを受けながら、ぼんやりと、今日は一切噛み付かれていないことに気づく。
耳元で、ほんだ、ほんだ、すきなんだ、と声が聞こえた。
アーサーさんを見ると、なぜか泣いていた。頭がおかしいと思った。
この人の噛み付くという行為は、暴力と同じだったのだ。
今までそれに気づかずに彼の行為を甘受していた自分をひどく恨んだ。
この人から早く離れないと私が暴力に犯されてしまう、早く離れないと、早く……
だんだんと遠くなる意識の中で、それだけは固く、胸に誓った。
翌朝起きると、身体は綺麗にされていた。
だが身体中傷だらけ痣だらけで、起き上がるのさえ苦痛に感じたが、とにかく水分を身体が欲していた。
のろのろとベッドから抜け出しキッチンへ向かうと、食べ物の匂いを感じた。
「……………アーサーさん、なにをしていらっしゃるのですか。」
「…………朝食、作った。…から、食べてくれ。」
なんだこの人は。
こんなことで昨日のことがなかったことになるとでも思っているのだろうか。
私は頭を抱えながら、椅子をひいて座る。
最低だ、この人は。
水をひとくち飲み、彼が作ったご飯に手を付ける。
まずい。
ここだ。ここしかない。ここで別れを切り出そう。
ここが別れを切り出す最高のタイミングだ。
目の前でこちらの様子を伺っているアーサーさんに目を向ける。
もうこの人にはついていけない。私にはマゾヒスティックの気はないのだ。
痛む身体を抑えて、私はゆっくりと口を開く。
「とても美味しいですよ、アーサーさん。」
END
結局お互いダメ人間な英日でした。