週末の我儘
ヘスラーが、笑う、満面の笑みで、多少の照れを含みながらも。
我儘、なんて。
なんてヘスラーに似合わない言葉だろう。
「付き合わせて悪かったな」
でも、付き合ってくれて嬉しい。
なんて、あまりにも正直すぎる感慨を、あまりにも直接的に伝えてくるから。
「いや、………俺も、嬉しい、から」
謝らなくていい。
照れ隠しにグラスを差し出せば、ヘスラーもまたグラスを持ち上げてかちんと合わせた。
二度目の乾杯は、先程よりももっと澄んだ透明な音が響いて、グラス越しに見るヘスラーの顔はとても優しくて、できうる限りの笑顔でアドルフもそれに返した。
2010.8.14