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【銀土】かつて戦争にいた銀さんと今戦場にいる土方の話

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銀時が傍らに置いた子供らと同じくらいの年頃、この国はもう戦争をしていた。
血肉を削るような、ひどい戦争だった。削って削って削ぎ落とし、どこにも何も残らないような、それはひどい戦争なのだった。


体の外側にあるものを削り捨ててゆくと、反対に、内側には張り詰めた感覚が満ちてくる。そうすると、いつでも戦える体になる。四肢の内側には脈々と血が巡り、呼吸をするごとにいっそう澄んでいく。こうして夜の狭間にあると、感覚はひどく鋭敏だ。

あまりに静けさが過ぎて、森が静まり返る丑三つ時には昼間の音に慣れきった耳のその奥で耳鳴りがする。その薄ら寒い静寂に辟易すると、そこで大抵は誰かが身の上話を始めた。「俺の故郷では、こういう晩になると、囲炉裏に火を炊いてみんなで丸くなり――……」と、こんな具合にだ。


戦争は、思想が渦巻いて始まるものだ。だから、こうして戦争の場所にやってきた彼等の話しはまるで尽きることがなく、これまでどう生きてきたのか、何を護るのか、何が夢なのか。それらの話は夜が明けるまで途切れることがない。思えば夢を語る猶予などあったこの頃は、まだ周りに随分と多くの人間がいたものだった。


銀時は大抵、そういった話にはじっと耳を傾けるばかりだった。誰かの故郷の話にふうんと相槌を打つことはあっても、その誰かに「お前の名前は?」と聞くことはなかったし、自分の名前を名乗ることなども滅多になかった。出で立ちからこちらを「白夜叉」であると知っている人間は大勢いたが、「坂田銀時」だと知っているものはほんの一握りだった。
しかし、それにさしたる感傷はないのだった。名前が分からなくても、敵か味方か、それだけ区別がつけば十分だったのだ。


そうして夜を過ごし、互いの顔が確かめられるほど明るくなったころ、刀を抱いたまま座り込んでようやく短い睡眠を取った。

その頃は、夜暗い中を横になって眠るなんて夢のような話だった。
今にして思えば、戦争を勝って終えるという志、それこそが夢のような話だった。目を閉じる瞬間、廃墟と化した寺院の隅で、仏像がどこか白けたようなまなざしでこちらを眺めているのがぼんやりと脳裏に焼き付いたのを、銀時は今でもはっきりと覚えている。
だって現実は、夢ではないので。


友人らはみな忠義のため、国のため、教えのために剣を取り、未来をそれに託した。