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戦争のお時間

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戦争のお時間




 夕焼けの光がさしこむ放課後の教室。
 ただ二つだけ、教室に存在する影を見つめて、その一つである正臣は目の前の少年に問いかけた。カチカチと携帯をいじる音だけが響いていた空間に旋律が落とされる。

「なあ、いいのか?」

 いまだに携帯の音は止まない。

「いいのかって…いきなり何の話だよ、正臣」
「来神だよ。なんか新入生がヤバイって話。帝人だって知ってんだろ?」

 カチ。音が止まった。
 携帯だけを見つめていた帝人の青い双眸がゆっくりと正臣を射抜く。その迫力に正臣は息を呑み、言いたかった言葉を確かめるようにして紡ぐ。

「平和島静雄と、折原臨也」

 この頃、この池袋を騒がす来神学園に通う二人の生徒の名前だ。噂によれば、入学当初からウマが合わなかったらしく、出会ったら喧嘩の毎日。それは学校の外にも飛び出して、路上で行われることも珍しくなかった。

 何が危険かといえば、まずは平和島静雄の《力》。暴力にも近い圧倒的な《力》。怪力では言い表せないほどの大きな。それは標識をちぎり、自動販売機を投げ、自動車を蹴り飛ばせるほどの力だという。
 それだけで脅威なのだけれど、当の静雄は穏やかな性格なんだそうだ。キレさせなければ大人しく、意識して人を傷つけることはない。
 ただ、その平和島静雄の力を引き出す折原臨也の存在。
 どうやら暴力団や他の高校までも引きずりこんで喧嘩を巻き起こすらしいのだ。それは平和島静雄に対する喧嘩だったり、彼自身が楽しむための喧嘩であるともいえる。

「まだ僕らに被害は出てないから別にいいんじゃないかな。…ってまぁ、黄巾賊はいれてないよ。そっちが先に手を出したって聞いたから」
「…すまん、俺の統率不足だ」
「ははっ!いいよいいよ、正臣のせいじゃない。あれだけの人数がいたら仕方ないもんね」

 くすくすと楽しそうに笑う帝人をじっと見つめる。
 紀田正臣の幼馴染である竜ヶ峰帝人は大人しそうな外見をもちながら、その中身も外見に似合っている穏やかで優しい性格なのだが。一変、帝人は《ダラーズ》という組織の創始者だという一面も持っている。
 《ダラーズ》は今や池袋全体…もしかしたら全国に広がりつつあるかもしれないカラーギャングだ。とはいってもリーダーも不在。掟も決まりもない、ただそこに在るだけのグループ。だがそれゆえに《ダラーズ》の目はどこにでもある。何もしていないからこそ、本当にどこにでも。
 そのことを正臣が知ったのは帝人が池袋に来たときのことだった。
 各云う正臣自身も、中学時代のときに作った《黄巾賊》というカラーギャングのリーダーなのだが。そしてここにはいないが、彼らのもう一人の友人である園原杏里は《罪歌》という独自のグループも持っている。

 この池袋は高校同士の諍いが絶えない。
 それを生き残るために彼らは幾度となく《ダラーズ》《黄巾賊》《罪歌》の存在を利用してきた。一般人まで巻き込むのは帝人は不本意だったが、自らや友人の安全確保には必要だった。
 
「それに平和島静雄や折原臨也は《ダラーズ》だから。何か起こったら僕が対処するよ」
「はっ!?ちょ、それ俺初耳なんだけど…」
「うん、言ってないもの。なんかそれっぽいID見つけたから探ってみたらドンピシャ」

「だからね。僕らに何か被害があった場合は…絶対に許さないよ」

 ぞくり、と背筋が冷える感覚がして正臣は青く輝く帝人の瞳を見つめた。
 こいつが味方で良かった──。再会して以来、幾度となく感じるそれに正臣はただ曖昧に笑みを返すだけだ。


作品名:戦争のお時間 作家名:センリ