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これ以上惚れたらどうしてくれるのさ!

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ああ、今日も一日が終わる。
臨也は仕事場で大きな夕日を眺めつつ、遠い目をして若干現実逃避を試みていた。何度も何度も連絡しようとした電話番号をもう一度呼び出すものの、通話ボタンを押す勇気が出てこない。
「・・・会いたいなあ」
もう二週間もたってしまった。存在すら忘れ去られていたらどうしよう。帝人は臨也を好きだといってくれたけど、何しろ自分は8つも年上なのだ、いつ愛想を尽かされてもおかしくない。ましてや帝人は可愛いし可愛いし可愛いし時々妙にかっこいいし、ああもう惚れるしかないだろうっていうか全人類が惚れるべきだそうなったっておかしくないけどそれだと困るなあすごく困る、なんてネジのぶっ飛んだことを考えつつ、もう一度深いため息をつく臨也である。
と、そのとき。
電話が鳴った。
「っぎゃあ!」
悲鳴を上げたのはほかでもない。電話番号を呼び出してかけようか迷っていた相手からの着信だったのだから、一気に脈拍が上がる。
「み、みみみみかどく、うわ、どどどどどうしよ」
わたわたわたわた、と、普段の落ち着きなど欠片も持ち合わせていないような慌てっぷりで、携帯を持って右往左往する23歳。出たい、声が聞きたい!と思う心と、でも出て別れ話とか切りだされたらどうするのさ!と思う心が臨也の中でせめぎ合って手が震える。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!うあああっと悲鳴を上げた臨也の背後で、こんどはピンポーン!とインターホンまで鳴った。ひゃあ!と飛び上がった臨也は、同時にうっかり携帯の電源ボタンを押して、電話を切ってしまった。
「ぎゃあああ!お、俺のばかああああ!」
せっかく帝人から電話がかかってきたというのに、なんてことだ。
臨也は履歴に残る「帝人君(はあと)」の文字を恨めしげに見つめて、こぼれそうになる本気の涙をぐっとこらえた。泣かない、俺は強い子!自分に言い聞かせる言葉が若干子供っぽいのも、それほど追いつめられた心理状態なのかと思えばさらに泣けてくる。
そんなことより、今は来客だ。取る勇気が出ない電話より先に、すぐそこにいる客をなんとかしなくては。
「ああもう!誰だよこんな時に!」
悪態をつきながら無造作にドアを開けて・・・誓って言うが、普段なら絶対に来客を確かめずにドアを開けることなどはない。このときは普通ではなかったのだ、と臨也の名誉のために言っておく。


「ええ、こんな時にお邪魔して、大変申し訳ありませんね?」


にっこり、と。
ドアの外に立っていた人はそう言って、ずいっと玄関に足を踏み入れて。
「、ぅえ」
目を見開く臨也の目の前で、後ろ手にドアを閉める。
その笑顔のさわやかなこと、さわやかなこと。思わず背筋が冷たくなるほどの微笑みに、臨也は出かかった悲鳴を本気で噛み殺した。いくらなんでも、ここでみっともなくわめくわけにはいくまい。好きな人の前では、男はほんのちょっとでもカッコよくいたいものなのだ。・・・たとえ、今さらと言われようとも。
「・・・みっ!み、みみみみみみか、みかどく・・・!」
「ええ、あなたの竜ヶ峰帝人ですよ、こんばんは?」
「おおおお俺の!?」
「違うんですか?」
「ちっ、違くないです俺のです!」
いかん、これはまずい。なんか有無を言わせぬオーラを感じる。
臨也は必死で自分を奮い立たせようとするのだが、どうにもこうにも心臓がドキドキしすぎて冷静になれない。だって二週間ぶりの帝人である。抱きしめたい抱きつきたいいちゃいちゃしたい。だけど帝人の笑顔はどこか振り切れている気がして、伸ばしかけた手をわきわきと空中で動かすにとどめる。なんか今、抱きついたら容赦なく蹴り飛ばされそうな気がしてならないのである。
「で?」
「へ?」
その、いい笑顔の帝人が。
「へ?じゃないですよ、何ですか二週間も恋人をほったらかして遊び歩くって、どういうことですか?」
大変、怒っていらっしゃる。
「僕なんかもうどうでもいいってことですかそうなんですかどうなんですか!」
「そんなわけないじゃない!」
なんかとんでもないことを言われて、臨也は思わず叫び返した。帝人をどうでもいいなんて思えるはずがない。ただ、その。だから、えっと、恥ずかしかったんです察してください!
とは、さすがに情けなさ過ぎて言えない。
しどろもどろになりつつ、真っ赤に頬を染めて目をそらす臨也に、畜生可愛いなあ!と内心思う帝人なのだが、それはぐっと抑えて顔には出さず、努めて冷静を装う。
「ええまあ分かってますよ?あなた僕の想像以上に乙女ですもんね、どうせ恥ずかしくって避けてたんでしょう」
「乙女って何!?それは聞き捨てならないよ帝人君!?」
余りの単語に声を裏返す臨也を、キッと睨みつける。
「あなたがそうやって煮え切らないから、仕方がないんです!「私」が引っ張って差し上げますよ!」
そしてばさっと、何か赤いものが臨也の目の前に差し出された。
「ふえ!?」
え、なにこれ。
花束?
っていうか薔薇の花束!?
え、なに超ロマンチックなんですけどこれ!
っていうか、え?
混乱する臨也に向かって、帝人が言う。





「いいですか!臨也さんなんかね、23にもなってロマンを追っかける超超超ロマンチストなんですから、そんなの普通の人間ならどん引きですから!大体手を握っただけで真っ赤になって耐えられない死ぬ!とか、キスしただけでもう死んでもいい!とか、そんなのどんだけ純情なんですかって話ですよ、23にもなって!大事なことなので二回言いました!あなたみたいな厄介な人間は、放置してたら周りが迷惑するんです!だからもういい加減、あきらめて「私」と結婚しなさい!」






返事はイエスしかありませんからね!と、呆ける臨也に花束を押しつけて、帝人は背伸びをした。
ちゅっと音を立てて触れた唇に、ようやく我に返った臨也は、真っ赤な顔をさらに赤くして、もうこれ以上赤くなれっこない、って位赤くして、その場にずるずると座り込む。
そして。
「へ・ん・じ」
かすかに頬を染めつつも、毅然とそう促す帝人に。
ああもう何この人かっこいいんですけど!惚れる!っていうか全人類惚れるだろこれ!と内心わめきつつ、臨也は答えるのであった。


「み・・・帝人君、大好き!」
「知ってます」