ほのかなぬくもりだけをとかしこもう
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ほんとうは遠くで
俺の家では冬にやるが、夏もいいもんだな、と笑っている横顔が随分と遠くにいるように見えるのは、貴方が夜空を見ているからでしょうか。その緑の眼には今も見えているらしい。私には遠すぎてもう見えないものが。
(99字/英日英)
覗きこんで、竦んだ
二人で並んで花火を見ていた。同じものを眺めている筈なのに、隣に居る黒い瞳には何も映っていない気がした。不安になって彼の名を呼ぶ。にこりといつものように笑い返してくれたが、背中に走る寒気は消えなかった。
(100字/英日英)
彼を滲ます悪いやつ
彼には大事な宝物があった。その話をしている彼は子供のように無邪気だった。でも最後には必ずため息をつく。それはもう彼の手の中にないから。私の前で緑の眼が揺れるのは、消えた宝物の話をする時だけだった。
(98字/英日英)
波ははじめ風だった
私もそうやって、今も誰かを傷つけているのでしょうね。彼が静かに呟いた。縁側に腰かけていた二人に夜風が吹く。俺を見ない黒い瞳がざわざわと不安を呼んでいる。彼が誰の話をしているのか、俺にはわからなかった。
(100字/英日英)
ぬるめた情熱で
トマト畑の兄ちゃんを見ているとあの人を思い出す。麦わら帽子をかぶって、きらきらの笑顔で汗を流している。兄ちゃんはいつもカッコいいけど、ここに居る時が一番輝いていた。あの人ほど情熱的ではないけれど。
(98字/マカロニ兄弟)
くるしいのが終わったら
青白い寝顔の前髪を撫でる。目尻には涙の跡が見えた。いつから泣いていたの?いつから苦しかったの?0時を過ぎてからでいいから言って欲しい、なんて思うのは我儘かな。もうすぐ終わるよ、君を悩ます7月4日は。
(100字/米英)
貰ってほしい春があるんだ
彼と出会えて、俺は冬から春を迎えられた。長い時間を一人で過ごしていたから、誰かが隣にいることが幸せだった。俺は暖かい気持ちをいっぱい貰った。だから今度は俺が君に春を贈りたい。今もまだ冬の中に居る君に。
(100字/英日英)
作品名:ほのかなぬくもりだけをとかしこもう 作家名:しつ