お料理と骸髑
睡眠は、棺桶の中でてもないと満たせないような職種ですし、色欲は溺れる事によるリスクが高すぎる」
瞬間、無言で俯いたクロームの、その兎のように真っ白な耳の先に上った赤色。
十代という年齢の割に無垢な少女のその様子に、骸は思わずクフフと喉を鳴らす。
困ったように眉を寄せ、顔を上げたクロームの瞳を見据えて。
「だから――いつでも素晴らしい料理を用意して温かく迎え、日常を思い出させてくれる優秀な料理番は、
マフィアにとってある意味では――勇敢な鉄砲玉なんかよりもよっほど、必要不可欠な存在なのですよ」
家庭、という言葉に、クロームの華奢な肩がびくりと震えた。
会いたかった人の口から漏れた、憧れていた響きに、身体は縛られたように動かない。
視線を外せないまま、相手は切り分けた料理を一口ゆっくりと咀嚼して。
「だから、また、是非ご、馳走して下さいね」
「……ぇ! あ、はいっ!!
……私、いっぱいご飯作ります。骸様や、犬や千種といっぱい食べられるように、
食べながらいっぱいお話して……ホントの家族、みたいに……!」
「おやおや……。何も泣く事はないでしょう?」
「っく、はいっ……ごめんなさい」