あぶりだし
結局、日があるうちは暑くて台所に行く気がしなかった。
夜も遅くになって、ようやくコンロの前に立った僕は、薄っぺらい紙が燃えてしまわないように焦げないように、小さな炎で慎重に炙っていった。
「…あいつ」
浮かんだのは、大きな蝙蝠傘をさした男の姿。
細長いシルエットは誰と言われなくても、すぐにわかる。
「トモダチ、か」
天気予報では、明日は久しぶりの雨だと言っていた。その後も二、三日は過ごしやすい曇り空になるだろう、と。
それでも、この夏の間には今日みたいに突き抜けた晴れはまだまだ幾らでも訪れるはずだ。そうしたら僕は、この絵を持ってあの公園に下手くそと文句を言いに行くだろう。
その日まで失くさないように、僕は彼の絵をそっとスケッチブックに挟み込んだ。