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　忍足が夢見るような眼で自分を視姦しているとも気付かず、跡部は回ってきた順番に従ってスタートラインに並び立った。その時ふと、何かを探すように辺りを見回し狙ったかのように遠い窓越しに、忍足と視線を合わせる。いや、それは忍足の気のせいだったのかもしれない。何故なら二人の距離は結構な開きがあったからである。しかし跡部は重なった視線に驚き固まる忍足に向かって、なんとも人の悪い、けれど大層魅力的な笑みを浮かべ何事かを口にした。その言葉を狂いなく理解した瞬間、忍足はへなへなと、座っているのに腰を抜かし机にしなだれかかった。
「いきなりどうしたんだよ、侑士」
　相棒の奇行には慣れている岳人が気のない素振りで呟くが、それに対してカタカタと震える忍足は、
「あ、あかん。めっちゃヤバい……」
　と唸るばかり。
　ヤバいのはお前だと洩らす岳人を後目に、忍足は締まりなく緩んだ顔を赤く染め固く決意していた。
（も、もう俺、ホモでも『バカ』でも構へん！）
　こんなに幸せな気持ちになれるのならば。
　にやける顔もそのままに、この日、ようやく忍足は恋に落ちた自分を認めたのである。




なんだろう？
その澄みきった瞳に　声に
真っ直ぐ立ってられないほど揺さぶられるよ。

神様、この感情はなんですか？


Im in love?