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【イナズマ】仔兎の鼓動

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仔兎の鼓動


「俺、鬼道の事好きだ」

言葉の意味を飲み込むのに1秒。
顔を上げるのに1秒。
その視線に射抜かれるのに1秒。
俯くのに1秒。

きっかり5秒後、心臓が馬鹿みたいな音を立てて跳ね上がった。
胸、というか、喉元で、とくとくと回転し続ける拍動。
いつだったか、仔兎を抱きかかえた時に感じた、軽く早い鼓動に似ている。
確か、生き物は一生に打つ鼓動の数が、大体決まっていたはずだ。
人間にも当てはまるとしたら、今確実に自分の寿命は縮まっている、と鬼道有人は視線を落としたまま考える。
まともな方向に、頭が回転していない。

「鬼道」
「……なに」
「いきなりごめん。驚いたよな」

耳障りの良い声は、よどむことなくいつもの調子で流れ込んでくる。
顔を上げなくても、どんな顔をしているのか分かった。
声と同じ、いつもの調子。
夕日を真正面から浴びて、空色の髪を淡い金色に染めて、西日に色づいたこの空と同じ色の瞳でこちらを真っ直ぐに見ている。
少し、笑っているかもしれない。
けれど、瞳は真っ直ぐで、真剣で、緩んだ所など一つもないに違いない。
風丸一郎太とはそういう男だ。
ああ、円堂に似ている。そう思った。
この二人は幼馴染というだけあって、そういう本質的な気性がとても似ている。
その口から発せられる言葉は、何一つ借り物のない、本物の言葉だ。
だから不意に放たれるそれは、とても強くて眩しい。

「……驚いた、というか」
「うん」
「いや……」

どうトラップすれば、上手く受け止められるんだろう。
喉の奥でぐるぐると車輪が回る。どんどん寿命が縮まってしまう。
風丸の言葉には、曖昧な逃げ道など存在していなかった。
『友達として』だとか『チームメイトとして』だとか、『人間として』だとか、そんな余分な色など、ついていないのだ。
『好き』は『好き』
真っ直ぐに届くから、そんなことまで分かってしまう。
でも、自分はどう、それに応えれば良いのだろう。
うつむいてる間に頭をフル回転させて、データベースを引っ掻き回してみるけれど
ぴったりと収まるものは出てこない。
当然と言えば当然。
自分はそんなてらいのない『好き』なんて気持ちをぶつけられたことがないのだ。
例えるなら妹が自分に向ける感情に似ている気はするけれど、根本的に何かが違う。