鬼の恋
破顔一笑。
「ありがとうごぜえやす!」
銀時にはなぜお礼を言われたか、その理由は一生分かりそうになかった。
土方が団子屋で座って団子を食べていると、沖田が近寄ってきた。その姿を見て土方が眉をひそめる。
「なにやってんだ、まだ勤務中だぞ」
しかし、土方の手にした皿から団子を取り上げると、大きく口をあけて串刺しになった団子を一口で食べた。もぐもぐと口を動かしたあと手にした串をじっと見つめ、にっと笑った。
「俺、決めた」
土方は、あん?といぶかしく沖田を見る。
「新八さんを嫁にする」
口に入っていた団子をぶはっと飛ばす土方に沖田が心底嫌そうな顔をした。
「きったねえなあ」
「あなななんで?っていうか嫁って?!」
沖田がふっうっとため息をついた。
「新八さんといれば何だか長生きが出来そうでさあ」
その言葉に土方がびっくりした表情で沖田を見つめた。
「あの、総悟くん?別にお友達でもいいんじゃねえの?」
土方の言葉に沖田がああと言った。
「そうですねえ、まずはお友達からはじめやせんと」
沖田の頬に赤みが差す。
「いやいや、お友達で十分でしょう」
沖田の目が少し輝いているのが不気味に思えてきた。
「いやあ、そんなまどろっこしいこと、性に合わねえ」
そうつぶやくと勢い良く立ち上がって土方に満面の笑みを浮かべて言った。
「これからちょっと俺の物にしてきまさあ」
その笑顔は土方が今まで見た中で一番の笑みだった。
沖田が軽く走っていくのを見ながら土方はあっけにとられていた。我に返った土方には沖田の笑顔がどうしようもなく気恥ずかしく思えた。その後で柔らかい笑顔が浮かんでくる。
「まあ、総悟が長生きできるなら、坊主には悪いが・・・」
と考えてふと先程の言葉を思い浮かべた。
「俺の物って・・・俺の物?・・って?」
普段の無茶な行動を思い返し、慌てて団子屋の椅子の上に小銭を置いた。
「お代はココに置くぜ!」
そう言って沖田の後ろを走って追いかけた。走りながらメガネをかけて困った顔をした新八を思い浮かべた。思わず苦笑する。
「坊主もとんだ鬼に目ぇつけられたもんだ」
ーほら、鬼だって恋をするんですよー
(終)
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