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再会のお別れ

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大学三年を迎える頃、携帯に涼宮ハルヒから突然一通のメールが届いた。
『この春からSOS団活動再開します!』
 僕はその相変わらず破天荒な文面に目を通すとともに、頭のなかにはさまざまな憧憬がよみがえった。高校生という多感な年頃に過ごした彼女らとの日々は、『仕事』だったとはいえりっぱな僕の青春だったのだ。
 高校を卒業すると同時に、涼宮ハルヒの精神状態は比較的落ち着きを見せていた。我々の任務は閉鎖空間などが発生した際の事態への介入から、主に現在の状態を静観するというプロセスに入っていた。『彼女は大人になった』というのが機関の見解であった。
 そんな状況であったから、僕はゆったりと羽を伸ばしていた時期でもあり、またしばし忘れてもいたのだ。彼のことを。あのひりひりとした激情のことを。


「では、活動再開を祝しまして、乾杯っ!」
 涼宮ハルヒの甲高い掛け声で、各々の缶ビールやサワーを合わせた。
 桜並木の絶好の花見場所でSOS団は久々の再会を果たした。皆高校の頃よりかは少しだけ大人びた風貌になっていたが、話すと内面はなにも変わりなかった。
 彼がまっすぐ僕を見ていないのを、僕は気付いていた。でもなに知らぬ顔をして、談笑したり桜が散る風景に見入ったりしていた。
 僕と彼は、あの頃互いを密かに好き合って、身体を重ねる関係にあった。禁為であるからなおさら盛り上がったのだと今は思う。また未来のない話でもあったから、当時の僕の悲観に陶酔した心なんてとんでもなく嘲笑的だっただろう。
 互いの進路はもちろん別々になり、卒業を迎えると同時に僕たちは自然と離れていった。それはほんとうに自然なことだった。最初からただの友人関係であったかのようだった。泣いたかどうかは、いまいち覚えていない。少し泣いただろうか。彼は泣いただろうか。

「冷えてきたからホットでいいか、全員」
 追加ドリンクの買出しに出された僕と彼は、自販機の前で商品を物色していた。春とはいえ、日が少しでも傾くと肌寒い。
「そうですね。朝比奈さんなんてひざ掛けをされていましたし」
 こうしてふたりきりで話すのは、どのぐらい時が経っているだろうか。なにも変わらないようであって、本当はきっとすごく変わっているのだ。今の彼を僕はなにも知らない。
「お元気でしたか」
「まあまあな。お前は」
作品名:再会のお別れ 作家名:ボンタン