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『回顧・三人の好奇心・新しい年へ』

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 今年も過ぎようとしているのに、最後になってわたし達三人はラッカのお説教を食らう羽目になってしまった。

 『見た目が成人相当となるまでは飲酒するべからず。』
 後日、オールドホームの決まり事に新しい文言が追加されてしまったのは言うまでもない。


◆ ◆ ◆


 街の鐘が夜十二時を告げた。古い年が終わり、新しい年が始まる。
 天上を厚く覆っていた雲が切れて、きれいな星空をのぞかせた。風もやみ、辺りはしんと静まりかえっている。あるのは風車が時折きしむ音くらいだ。
 わたし達灰羽は、風の丘に立っている。オールドホームの灰羽達も、廃工場の灰羽達も、みんな。交代制ということで、来年の今頃は廃工場から壁を見ることに決めている。――来年じゃなくてもう今年になるのか。
「ここから見る壁ってのも悪くないもんだな」
「廃工場からちょっと遠いけどね」
 ヒョウコさんは傍らに寄り添うミドリとそんな会話をしている。なんだか幸せそうだ。
 わたしはやっぱり臆病で、黄色の鈴の実の主が誰なのか、まだ聞き出せずにいた。
(でも、このままじゃ先に進めないわよね)
 今年はちょっと勇気を出してみよう。ここ、風の丘からの帰り道にでも――

「ねえ、この後どうなるの? なんか怖いことでも起きるの?」
「ラッカに訊いても教えてくれないんだもん」
 マヒルとマシロが訊いてきたので、わたしは答えた。
「壁がね、この一年で貯まった人々の想いを空に還すの」
「壁が? 壁って生きてるの?」とマヒル。
「なんていうか……上手くは説明できないなあ。厳かで、神秘的なものなのよ」
 わたしは言葉に詰まりながら、マヒルに微笑んだ。
「マヒルもマシロも、そろそろだよ。目を閉じて、耳を澄ませて――」
 ラッカの言葉を受けて、わたし達は目をそっと閉じる。

 ほら、なにが聞こえてくる?
 そしてあなたは、なにを想う――?

 これから迎える一年が、みんなにとって幸せなものでありますように。



  <了>