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巡りあえた奇跡と喜びに感謝します

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<巡りあえた奇跡と喜びに感謝します>






温かな木漏れ日が差し込む通りに面した庭に一人の老婆が揺り椅子に座ってある一冊の本を手にしていた。
その本はとてもとても古く、紙が黄ばんで所々が破けてしまっていた。
それに指を這わせ、彼女は懐かしむように目を細めながら書かれている文面をゆっくりと読んでいた。
静かで穏やかな時間が流れている所へ、突然慌しく駆けて来る足音が今までの雰囲気を壊してしまった。
開いていた本を閉じて、彼女は通りへと視線を向ける。
視線の先には、彼女の娘が数年前に授かった子供二人が元気良く手を振ってこちらに向かって来る姿があった。



「ばぁちゃん、またあの話訊かせてくれよ!」

ぎゅっうとしがみ付いて来る孫に、彼女は微かに苦笑を浮かべながらわかったわと頷いた。
直ぐに訊く体制に入った孫に再び苦笑を滲ませながら、もう一人の孫へ話を訊くかと訊ねると、仏頂面の孫は小さく首を縦に振った。

「本当に好きなのね…」
「うん!大好き!!」

満面の笑みでそう答えた孫に、彼女はそれじゃあ、と前置きをして話し出した。
双子の孫は柔らかい声が紡ぐ物語に耳を傾けた。



「これはその彼と彼の複製品に纏わる、哀しくも壮大な物語。



昔々、キムラスカの王国には<聖なる焔の光>と名付けられた男児が居ました。

―――ND2000。ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。其は王族に連なる赤い髪の男児なり。
名を<聖なる焔の光>と称す。彼は、キムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄に導くだろう


そもそもの始まりは、<聖なる焔の光>の複製品が作られたところから、全てが始まったのです。

複製品とは、その名の通り複製されて作り出されたもの。
<聖なる焔>の複製品が造られたのです。
誰も知らない所で、着々と準備が進められていた計画の一つに利用される為に。
被験者<聖なる焔>は、複製品が造られその存在は<聖なる焔より堕とされし灰>と呼ばれ、今まで居た陽だまりから弾き出されてしまいました。



それから歳月を経て、物語は転がり始めました。

複製品の<聖なる焔>は誘拐され、その時のショックにより記憶を失ったとして扱われ、屋敷に長い間監禁生活を強いられていました。
そんなある日、突然の襲撃者により彼は外の世界へと思わぬ展開で足を踏み出す事となりました。

今まで知らなかった外の世界へ足を踏み入れた複製品は、初めて人を殺しました。
自分の手で斬りつけ、その手を赤で汚したのです。



―――ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ、鉱山の町へと向かう。



当時信仰されていた<預言>に記されていた未来の出来事。
複製品は<預言>に詠まれていた通り、鉱山の町アクゼリュスへと向かいました。


途中、彼は己の被験者と初めて邂逅を遂げました。
しかし、彼は未だ自分自身が造られた存在だと言う事を知りませんでした。
自分が解らない事を説明してくれる人が居ない中で、彼の苛立ちは募りに募り、唯一自分を認めてくれていた師に逢いたい一心でアクゼリュスを目指していました。



そして、彼はそこで大きな罪を犯してしまいました。

敬っていた師に騙されているとは知らずに、彼は彼の持っていた特殊な能力―超振動を発動させ、アクゼリュスを一瞬にして崩壊させてしまったのです。
崩壊により、沢山の人々が死んでしまいました。

彼は自分の過ちを否定する言葉しか発する事が出来ず、一緒に居た仲間たちから見離されてしまいました。

そのときになって彼は自分で考えて判断し、行動しようとせずにいた結果がこれなのだと自身の過ちに漸く気がつきます。

それから彼は長かった髪を切り、たった一人彼と一緒だった少女の前で罪を犯した責任を負い、変わる事を決意したのです。



少しずつ少しずつ変わろうと努力している複製品の姿に、一時は離れてしまっていた仲間たちが戻ってきました。
師であったヴァンが目論んでいた計画の実現を阻止すべく、彼は彼なりに出来る事を見つけて必死に
頑張っていました。
そうした中で彼と仲間達は絶対である筈の<預言>が、<聖なる焔>の複製品が現れた事で狂ったのではないかと言う事実に行き当たりました。
様々な問題が絡まりあう中で、ヴァンのレプリカ大地計画の阻止、地殻静止、外殻大地の降下作業、キムラスカとマルクトの両国へ締結を持ち掛けるなどやるべき課題は決して少なくはありませんでした。

それでも大地を降下させる作業も終盤に差し掛かり、最後のセフィロト―アブソーブゲートで
ヴァンと対峙し、そして倒す事に成功しました。
パッセージリングを制御し、外殻大地を無事に降下させることが出来ました。
それから第七音素の意識集合体であるローレライより<ローレライの剣>を被験者に、複製品へは
<ローレライの宝珠>が送られました。
ローレライは自身を解放して欲しいと、同位体であった被験者と複製品に助けを求めたのです。
しかし複製品は<ローレライの宝珠>を受け取ってはいませんでした。
被験者は複製品が受け取り損ねてしまった宝珠を探して各地のセフィロトを回っていました。

問題が交錯しあう中で、マルクトの正規軍が何者かによって襲撃を受けるという事件が起きました。
襲ってきた者たちはキムラスカ軍旗を掲げていたとの報告の真意を確かめる為、バチカルへと向かいます。
確かめた結果、平和条約に基づいて軍事活動をしていないとの事でした。何故、複製品たちがキムラスカの名を騙ったのか。
それはキムラスカとマルクト両国の関係を悪化させ再び戦争を勃発させようと目論んでいる者の仕業で、襲撃者はその為に造られた複製品たちなのでは、とある推測を立てました。
歪んだ形で<預言>を成就させようとしている事は間違っていると、信仰の総本山ダアトにいる導師に
意見を仰ぐために、複製品と仲間はダアトを目指します。

ダアトへ到着した時、仲間の一人が倒れてしまいます。続いて大地が激しく揺れました。
地殻の揺れを停止させて抑え込んでいた障気が復活してしまったのです。
しかし障気は第七音素を大量消費でもしない限り、復活することはありえない筈でした。
そこで浮上したのが複製品が今も何処かで大量に造り出され、それにより莫大な量の第七音素が消費されているのではないか、と。
何処かに閉じ込められてしまったローレライを解放しなければ、第七音素が大量に消費される事によってプラネットストームが活性化してしまい、障気が大地へと溢れかえってしまったのです。

その時、仲間の一人であった少女が突然離脱して導師を何処かへ連れて行ってしまいました。
慌てて仲間達が追いかけると、六神将の一人―元守護導師役の少女が行き先を教えてくれたのです。
向かう先はザレッホ火山にあるセフィロトです。
ザレッホ火山に向かうため、ダアトの出口に行ったときです。
そこには死んだはずの人たちの姿があったのです。
仲間の一人の金髪の青年の姉も死んでしまっていた筈なのに、その姿がありました。
彼らは仲間達の動揺を誘うために、敢えて見知った人物たちで造られた複製品たちでした。