存在の耐えられない重さ
都会のネオンが反射する
砕けたガラスが一面に
「・・・心中、しちゃえば良かったのかな。」
「何だ。今頃後悔してやがんのか?」
「まさか。シズちゃんと死ぬなんてご免だよ。」
「ハ。そりゃお互い様だ。」
交わす瞳はギラついて
都会のネオンそのままに
どちらからともなく手を伸ばす
先程までのぬくもりを
放してしまうにはまだ惜しい
「・・・手ぇ、血ぃ出てんぞ?」
「・・・シズちゃんこそ・・・血だらけだよ?」
「あぁ?・・・あぁ・・・ガラスか。」
「ねぇ・・・何で今日は・・・騎乗位なワケ?」
「何でって・・・ガラス・・・だらけだろうがよ?」
「そういう・・・優しさこそ」
一番無駄だと思わないのと言う声は
激しい突き上げに阻まれて
言葉にならずただ悲鳴
月夜の鴉が啼くような
掠れたアァと言う声に
ニヤリと静雄の口元が
満足そうに吊り上がる
突かれて悶えて身体がしなり
浮かび上がるは細い三日月
鴉色の髪乱して振って
まるで尾羽が飛び散るように
闇色の目がネオンを吸って
妖しく光ってとろりと溶けて
流れて落ちるガラスの上に
ネオンが映ってまた光る
すっかり疲れて腹の上
破いた袖で手を巻いて
うとうとまどろむ臨也の髪を
静雄は黙って撫でている
心中ごっこは金輪際
付き合ってやる気は毛頭無いが
さっきの臨也のあの軽さ
手を放したらすぐにでも
風に流れて消えそうな
そんな軽さが気に掛かる
微笑む顔も
柔らかな声も
細い身体も何もかも
気になってしまってしょうがない
街に居ればすぐ解る
どうしようもなく気になって
すぐに気付いてしまうから
だから苛つく
苦しくて
存在そのものが苦しくて
見ればその場で消したくなって
堂々巡りの
自分達
「ちょっ!痛っ?!急に振り落とさないでよ?!」
「煩ぇ!!イツまで乗ってやがんだノミ蟲が!重ぃんだよ!」
「はぁっ?!俺はスレンダーが自慢なんだけど?!」
「煩ぇ!!手前は無駄に重いんだよクソが!!」
「何それ?!俺の体重知ってる?!」
「煩ぇ!!も一回ヤられてぇのか手前!?」
「冗談!!俺もうそんな体力無いしね?!」
「あぁもう煩ぇ!!手前は重いんだよ解ったか!!」
「何それ日本語で言ってくれる?!」
「ハァ?!日本語だったろうがよ今?!」
好きで
どうしたって好きで
その
存在の重さが耐えられなくて
だから
「殺す!!アァもう殺す!!ブッ殺す!!」
「うわぁ鬼の形相だね。じゃ、さよならシズちゃん?」
「このォオ!待てぇ臨也ぁあ!!」
「アハハ。待たないよ?」
好きで好きで好きで
それが嫌で
堪らないからいつも逃げる
その存在が重すぎて
好きで
どうしようも無いから
「ねぇシズちゃん死んで?」
「臨也ぁ貴様そんなにブッ殺されてぇか?」
もう
殺したいくらい
好きだから
消えて欲しいと
願う
その存在の
耐えられない重さ
作品名:存在の耐えられない重さ 作家名:cotton