図書館ではお静かに
食満は下駄箱から靴を地面に投げ出して、私をみないままぽつぽつとしゃべった。
「なんだ」
「まあ、その、なんだ」
「はっきりしろ」
「だからー、…どこのだれがおまえを好きって言わないのか知らねーけど、俺はおまえは綺麗だと思うし、なかなかかわいい性格してると思うよ。だから自信持てよもっと。な!」
「…食満、」
「ふ、今結構いいこと言ったと思わねえ?」
「おまえ一生彼女出来ないぞそのままだったら」
「なんで?!」
ぎゃあぎゃあわめく食満をおいてさっさと昇降口を出た。鈍感さはときに罪になるということをどうやって食満にわからせようか、残り少ない今日を有効に使わなければと私は一生懸命考えた。とりあえず、おまえじゃなかったら机を貸すのも嫌だし、嫌なのに貸してしまうのもおまえだけだし、集中力が切れるのもおまえの前でだけだし、髪について触れられて少し緊張するのもおまえが相手のときだけだというのを教えてやってもいいかな、とは思えた。私も単純だな。