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【鬼道さんと宿題くん!】

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「おい、そこの綴り間違っているぞ」
 シャーペンで指された箇所を見た半田は「うわっ。ほんとだ」と慌てて消しゴムを手にした。
 とある教室では現在サッカー部が集結していた。
 そこかしこで机を向かい合わせた部員達は朝から延々と夏休みの宿題と向き合っている。
 時間が昼を過ぎた事を壁山の一声で気付いた鬼道は半田に向けていた視線を上げ、教室を見渡した。



 八月も後半を迎えた今、夏休みの宿題を終えているのが鬼道、豪炎寺、風丸、土門、一ノ瀬、木野だけだと知った同じくマネージャーの雷門夏未が激怒したのがこの勉強会のキッカケだ。
「サッカーもいいけど、学生の本分は勉学です! 怠けてばかりなんて許しません! これは理事長の言葉ととってもらって結構です」
 決まり文句を吐いた夏未は早急に宿題を終わらせるよう部員に詰め寄ったが、元々していなかった者達が一日二日で終わらせることなど出来るはずもない。家でしていると集中出来ないという円堂の言葉に、木野の発案で勉強会が決定したのだ。
 終わった者はそれぞれ答えを教えるのではなく、促す役目として参加した。


 三日目となる勉強会。よくもまあこんなにも溜めたものだ、と鬼道は呆れて溜息を吐く。
 向かいでは英語の宿題を必死にこなしている半田、松野、影野がいる。この三人はこの英語のプリントが終われば全ての宿題を終える事になる。
 他には目金は一日目に既に終わり、少林と宍戸は先程机の上に立ち上がり一緒に歓喜の舞を踊っていたことから終わったのだろう。
「残るは壁山、栗松、染岡か」
「あとキャプテンもね」
 プリントから目を離さない松野が付け加える。
 キャプテン――円堂。彼が一番の問題児だった。
 鬼道はその円堂の姿を探し、そして居ないことに気付いた。
「おい、円堂はどうした」
 壁山と栗松に理科を教えていた木野が答える。
「さっきトイレに行くって出て行ったけど」
 続いて染岡に数学を教えている豪炎寺が言った。



「――そう言ってもう一時間経つがな」


「……おい、それって」
 嫌な予感を感じたのは風丸も同じだったらしい。一息ついていたが、顔を引き攣らせている。
 深い溜息を吐くと鬼道は立ち上がる。
「俺が探してくる。皆は続けてくれ」
 風丸に半田達を任せ、鬼道はマントを靡かせ教室を出た。




 円堂が行く場所なんて大体予想がつく。迷わない足取りで鬼道はその場所へ向かう。
 夏の日差しが容赦なく照りつける中、木が立ち並ぶその場所は木陰を作り、幾分過ごしやすい。
 探していた姿はやはりそこにあった。
 制服のままでサッカーボールをリフティングしているサッカー部のキャプテンは汗を輝かせ、楽しそうに笑っている。


「――随分と楽しそうだな」


 盛大な嫌味を混ぜて声をかける。
 が、彼の性格上それに気付かないことも鬼道は既に知っていた。
「あ、鬼道! お前も来たのか! そうだ、シュートしてくれよっ」
 無垢な瞳で見つめられ、鬼道はうっかり頷きそうになった。が、慌てて頭を振ると「違う!」と声を荒げた。
 驚きに目を丸くしている円堂に鬼道は仁王立ちで言った。
「今日はサッカーをしに来ているんじゃないだろう。夏休みの宿題をやりにきているんだ」
「あ……」
 本気で忘れていた辺りが円堂が円堂と言われる由縁だ。
 恐らくはトイレに行くと言い、教室を出た円堂は息抜きに外の空気を吸おうとしたのだろう。そして、グラウンドにでも転がっていたサッカーボールを発見したかして我慢が効かなくなったのだろう。
「気持ちは分かる。ここ三日ずっと教室に籠もって勉強ばかりしていて、気が滅入るのも。だがな、宿題を終わらせなければ堂々とサッカーは出来ないんだぞ。だからこそ、皆頑張っているんだ。キャプテンのお前もそれに答えろ」
 言い過ぎたか、と鬼道は目の前の円堂の様子を見て少し後悔した。
 ボールを手に円堂はしょんぼりと俯き、その表情を見せない。
「お前ももうすぐ終わるんだろう? 俺が教えてやる。だから、」
 早く終わらせて一緒にサッカーをしよう。そう言おうとした鬼道を止めたのは顔を上げた円堂の真っ直ぐな目だった。
「そうだよな! 皆、ずっと頑張ってるのにキャプテンの俺だけが楽しい思いしてちゃあダメだよなっ」
「あ、ああ。その通りだ。分かってくれたか。じゃあ、早く戻って……」
「よしっ! 皆も呼んで一緒にサッカーしよう!」
「は?」
「勉強にだって休憩時間は必要だろ? その時間にサッカーをしたって夏未も文句言わないって」
 大丈夫! 休憩時間が終わったらちゃんと宿題やるから、と円堂は止める鬼道の声も聞かずに校舎に向かって行ってしまった。



「――ったく。円堂らしいと言えば聞こえはいいが、あいつ賭けの事を忘れてるんじゃないのか……?」



 勉強会が決まった日、円堂は夏未と約束と称し、賭けをした。
 その場に居た鬼道はそれがずっと気がかりだったのだが、この様子では賭けは夏未の勝ちになりそうだ。

 勉強会が始まって何度目かになるか、四回を超えた辺りから数えなくなった溜息がまた一つ増える。




 二日後。鬼道の予想通り、一人だけ宿題を終えることが出来なかった円堂は夏未にこっぴどく叱られた。
 そして、賭けの結果は夏未が勝利し、与えられた罰は円堂には拷問のような仕打ちだった。



「豪炎寺、いくぞっ」
「ああ!」
 息のあったプレイを見せる豪炎寺と染岡はその力強い必殺シュートを難なくゴールに入れる。続いて一ノ瀬と鬼道の必殺シュートも華麗に決まる。
「円堂がいないゴールって何か変な感じだな」
 鬼道の隣に立った一ノ瀬が頭の後ろで腕を組み言った。
 そう。今、雷門サッカー部のゴールを守る者は誰も居ない。
 最初は目金がゴール前に立ったのだが、豪炎寺の必殺シュートを一発受けただけであっさりとベンチ送りになってしまったのだ。――「大丈夫か、目金」「ああ、豪炎寺君。僕なら大丈夫です。気にせず練習にもどってくだ」「そうか、じゃあな」「ちょ、ちょっと! せめて最後まで聞いてくださいよぉ!」
「まあ、今回のことは自業自得なんだけどね」
 そう言って練習に戻る一ノ瀬の背中を見送り、鬼道は一人グラウンドから出た。
「お兄ちゃん、何処行くの?」
 ベンチでドリンクの管理をしていた春奈に見つかり、足を止めた鬼道は気まずそうにしている。
「いや、ちょっとな……」
 溺愛する妹に言葉を濁す鬼道の姿は珍しい。そして、そんな兄の考えていることに気付いた春奈は「はい、これ」と、ドリンクを二本手渡した。
 小首を傾げる鬼道ににっこりと笑みを向ける。
「キャプテンに頑張ってください、って言っておいてね」
 目を見開いた鬼道は次に顔を赤らめ、春奈から顔を逸らした。
 慌ててその場を去ろうとした鬼道は階段を上る途中、足を止め背中を向けたまま「ありがとう」と礼を言った。
 恥ずかしがり屋な兄の姿に春奈はくすくすと小さく笑った。





「くっそおおおおおおおおっ!」
 シャーペンを放り出した円堂は勢い余ってそのまま椅子ごと後ろに派手な音を立てて倒れた。
「いっててて……」