消失するインディゴ
ただあつかった。覚えているのはそれだけだ。臨也が静雄の上で何をして何を言っていたのだとか、自分が何をしてしまったのだとか、そんなことを考えてる余裕など静雄にはなかった。体に残るのは狂おしいほどの熱だ、静雄が一人きりで眼を覚ました時、ただそれだけが嘘のような昨日の夜を嘘ではないと告げているようだった。
***
真夏に煽られた風は熱をはらんだまま静雄の前髪をかき上げる。
汗の浮いた喉に触れていった臨也の手は思っていた通りの冷たさだった。それが不思議と暑さを助長しているようで少しばかり腹がたつが、それでも殺すとわめきながら追いかけまわす気にはなれなかった。
深く眼を閉じ、瞼を押し上げる。真上に広がるのは、ただ夏を叫ぶようなインディゴブルー。
ああ、あれに解けてしまえたら。
暑さに当てられた頭の中で、静雄はそれだけを考える。これも熱のせいだと、どこか空回りする思考の中で、汗の浮いた額をぬぐう。
夏は苦手だ。ただでさえあまり回転の良くない思考回路が途切れたように静止する。覚えているのは記憶か、それとも願望か、脳裏にちらつく映像に舌打ち静雄は熱っぽい溜息を吐いた。
「あつい、」
呟いた声はかすれていて、まるで、あの嘘のような夜みたいだなんて、