シオンが風邪を引いた
「いいんですよシオンさん。先輩いつもサボってばっかりなんだから、ああいう時位働かせないと」
元気そうなシオンにカルネも安心した笑みを浮かべる。
「回復して良かったですね。やっぱりシオンさんはそうでないと」
「そうだぞシオン。体が一番大事・・・大事なんだからなぁ〜・・・」
フラフラと歩く疲弊したクラウに、二人は吹き出す。どれだけ働いたのか知らないが、確かにシオンがいない間頑張ってくれたようだった。
二人がいなくなって、静かになった部屋。一人きりは静かだなぁと思っていると、そういえば一人ではなかったかと思い出す。
「ルシル」
気配を感じることはできないが、きっと彼はそこにいるのだろう。シオンはほんのり微笑みを浮かべて、不思議な護衛に礼を述べた。
「昨日は気を使ってくれて、ありがとう」
返事はない。だが、くすり、と笑う声が聞こえた気がする。
それにシオンが笑みを深めると、扉をノックする音が聞こえた。
「ミラン・フロワードです」
「入れ」
扉を開けて入って来た部下を見る。彼は昨日の訪問時の様子からいつもの彼に戻り、感情を感じさせない表情で入ってきた。
「ご気分は如何ですか?」
「大丈夫だ。心配かけたな」
「いえ、体調管理も王の勤めです。これからはご自愛下さいますよう」
「解っている。すまないな」
フロワードは首を振る。
「〜〜の件についてですがーーー」
そして何も無かったかの様な顔で仕事の話を進める。シオンは気を引き締めて話を聞く。
全て話し終えて指示を下した後、シオンはフロワードを見た。フロワードは少し不思議そうな顔をしていて、シオンは首を傾げる。
「なんだ?」
「いえ・・・陛下が、何故か嬉しそう笑っている様に見えまして」
少し驚くが、すぐにシオンは微笑む。
「いや、良い部下達を持ったなって思ってさ」
不思議そうに首を傾げるフロワードに、シオンは笑った。
作品名:シオンが風邪を引いた 作家名:ハクヨウ