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僕にとっての神様

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 死んだ金魚をどうしたのかは、なんとなく聞けなかった。

「ごめんね、佳主馬くん。せっかく取ってくれたのに」

 金魚を検分していた健二の視線から、佳主馬が感じ取った不穏なもの。遠くへ追いやっていたそれが、確実に背後から忍び寄っていた。健二の気持ちは、金魚を悼むほうではなく、佳主馬の気持ちを慰めるほうだけに向いている。それが佳主馬を恐ろしくさせる。
 自分が今相対しているのは、これまでに知らない人種なのだと言う、底知れない恐れのようなもの、そして自分はそんな彼を好いているのだ、傲慢にも、いつか愛されると思っていたのだと言うようなことを、一挙に目の前に突きつけられた形になる。肌とカットソーの間に薄氷を入れられたように、佳主馬は一度真っ直ぐに背筋を伸ばし、ぶるりと大きく震えた。その後何を話したか、どんなことをしたかは、あまり覚えていないのだが、その夜見た夢のことを、佳主馬は時々思い出す。

 夢の中で、自分は一匹の金魚だった。ガラスの鉢を住処にして、水の中を自在に泳ぎ回れる身体を持ち、何だって出来ると思っていた。だからきっと、膜越しに覗き見る世界でもうまく生きていけると思ったのだ。勢い跳ね出た金魚鉢の外は、彼の思っていたより冷え冷えとしていて、なにより息が出来ず、ぱくぱくと空気を求めて口を開け閉めするが、誰も手を貸さない。水中では思うままにしなった、美しい赤色の身体が、徐々に水気を失い、干からびていく。もう駄目だ、苦しい、息が続かない、というところで目が覚めた。
 起き抜けで靄のかかった頭のまま、佳主馬はその夢に自分の恋心を見て、少し泣いた。無様に跳ねて、乾いて死ぬ恋。神様は、佳主馬のことも救わないだろう。
作品名:僕にとっての神様 作家名:ゲス井