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強さを望み、弱さを願う

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「……見せかけではない…本当の、強さか」
「そう。今のキミには、その『強さ』はある?」
「…………」
 答えは一つしかない。否、だ。
 まあ、そう言う僕もあるか否かと言われたら否だけど。でも、この「強さ」を一番必要としているのはきっとレッドだ。僕よりも他の誰よりも、遙かに無くてはならないもの。敗北を怖れず、立ち上がり、主と共に前に進む力。その力を得るには、敗北を受け入れる勇気が必要だ。彼が今まで、避け続けてきたものが。
 レッドの指先が微かに震える。僕は何も言わずに手を添えた。熱い。熱いが、手を添えずには居られなかった。覇気を無くした彼の瞳がゆっくりと細められ、自嘲するような声が零れ落ちる。
「弱さの先にある強さ…か。そうだな…我はずっと逃げ続けていたのかもしれん。キングである主の忠実なるしもべとして…主に勝利を約束する者として…強さを誰よりも欲した。それこそが我の使命だと信じていた。だが今思えば…我はただ、執拗に追ってくる『敗北』の影を振り払おうと、必死に逃げているだけの弱者だったのだろう…。そうしたところで、結局は主を玉座から墜とす結果になってしまったというのに」
「だけど、孤独の玉座から墜ちて、ジャックが得たものも沢山あったよね?」
「…勿論理解している。それが主にとって必要であるということも」
「あの負けは間違いじゃなかったんだよ。キミはあの敗北が自分の強さが足りなかったせいだって思ってたんだろうけど、それは違う。僕の強さが上回った訳でもない」
「……ああ…今ならわかる」
 彼がため息と共に呟く。

「貴様の『弱さ』が、我の『強さ』を上回ったのだろう」

 弱さを受け入れている者は、強さしか求めない者を追い越せる。心の強さに限りはない。一度認めてしまえば、これほど安定した強さもないのだ。難しいのは、受け入れることだけ。特にレッドのような、プライドの高い奴は余計に。
 添えるだけだった彼の手を、しっかりと握る。全てを燃やし尽くす熱が手を伝わって僕の全身で荒れ狂い、思わず眉をしかめた。それに気づいたレッドが慌てて手を放そうとするけど、僕はそれを許さない。彼に対しても、自分に対しても。
「その『強さ』を得られるかどうかはキミ次第だよ。こればかりはマスターの言ってるような絆の力だけではどうにも出来ない。最後はキミが決めないといけないことだから。でも、」
 焔の消えた彼の瞳を真っ直ぐに見つめる。僕の瞳の奥にある星の煌めきが、彼の瞳の火種となるように。

「キミは、もう怖がる必要はない。それだけは言っておくよ」

 怖れていたのは、敗北と共に全てを失うと思っていたから。大切な故郷と仲間を捨てて王になった彼らに与えられたのは圧倒的な賞賛と絶対的な勝利の日々、そして…それらを得るために歩んだ綱渡りのような毎日。満たされないとわかっていても、全て無くなってしまうのが怖かったんだろう、と思う。
 でも、今の彼らには敗北しても手元に残る確かなものが沢山ある。それがわかっているのなら、きっと。
 彼が目を閉じる。返答はない。僕達は暫く互いの間に沈黙だけを落としていた。





 レッドデーモンズは、スターダストに言われた様々なことを思い返していた。正直、今すぐに整理をつけろと言われても難しい話だ。まあスターダストもそんなつもりで言ったのではないだろうし、ゆっくりと考えていくことにしよう。ひとまずそう結論をつけ、改めて枕元を見やる。

「……この状況で寝るのか?普通…」

 視線の先では、スターダストが枕元に突っ伏して寝息を立てていた。かなりの間お互いに黙りこくっていたのは確かだが、まさか寝るとは。全くもって行動が読めない奴である。長い付き合いになるとはいえ、こういうところは未だに予測がつかない。真面目な話をしておきながら、寝るなんて普通ではあり得ないだろう。
「…まあ、そういうところがお前らしい、と言うべきなのかもしれんがな」
 まだ多分に幼さの残るスターダストの顔を軽く指でつついてやろうとして、手が握られたままであることに気付く。手の熱は引いていない。それでも彼の表情に苦痛は見られなかった。それどころか、酷く安らかにすら見える。
「……信じているのか、我を」
 返事はなかったけれど。それでも。
「貴様が信じてくれているのなら、我も立ち向かわねばな」
 最終的に決めるのは結局自分。そう言われたが、決める勇気は絆から貰うのかもしれない、と彼は一人思った。