ERROR DETECTION
タイトルを言わなかったのに何でわかったんだ? オレがすっかり怒気を削がれてびっくりしていたら、職業柄、と苦笑混じりの声が降ってきた。
「職業って何だよ。泥棒かよ?」
「あのな……まあ、それもないわけじゃないけど。マジックは視線が命ってとこもあるし」
──ああ、ならあんなに必死で見上げてたんだからバレバレか。オレは息をつきながら、もう不要になってしまった意地を捨ててその本を抜く。
「……借りだなんて思わねーからな」
「これぐらいで貸しだなんて思わないって。そのかわり、阿笠博士によろしく伝えといて」
──って、博士狙いかよ!
ころっと黒羽に転がされかけてた博士のことだ。会わせたが最後、どんな協力をしちまうか不安だ。
「泥棒の手助けはさせないぞ」
「まあまあ。それはそれ、これはこれ」
「却下!」
オレは暴れて黒羽の腕から飛び降り、距離を取って全身で拒否した。
「じゃ、そのうちってことで。またな」
「ちょっ……勝手なこと言うな! そのうちなんて絶対ないからな!」
憤慨して叫んだけど、黒羽は気づけばまた煙みたいに消えている。ちっ、逃げ足の早い野郎だぜ。
オレは手元に残った本を見下ろして、ふと気づいた。結局、今回もあいつを捕まえ損ねたってわけだ。
果たしてこれは黒星になるのかならないのか──その判定は寝込みながら待っているふたりに委ねることにして、オレはレジへと向かった。
作品名:ERROR DETECTION 作家名:にけ/かさね