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にけ/かさね
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novelistID. 1841
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Another Birthday

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五月の第一週目は黄金週間という名前がついている。
 だからといって高校生にもなれば子供というにはもうすっかり薹が立っちゃってるわけだし、親にどこかに遊びに連れて行ってもらって喜んだりもしない。まあ、カレンダーの文字が赤くてラッキーだな、とは思うけどさ。
 それが彼と出会ってからというもの、その日が黄金週間のうちの一日として存在してくれることにつくづくとありがたみを感じちゃったりしちゃってるわけだ。もう、作ってくれた人、本当にありがとー! なんて謹んで感謝を捧げようとちらっと思っちまう程度には。
 そういうわけで。
「デートしようよ」
 にっこり笑って可愛らしくそう誘うと、ちょうどシャツの右袖のボタンをとめようとしていた彼は手をとめて、顔を上げるとゆっくりと俺のほうを振り返った。
「なにがデートだ、バカ」
 うーん、案の定というか予想通りといおうか……やっぱり俺ってスゴイかも。台詞まで完璧、シュミレーション通りじゃん。新一はとてつもなくイヤそうな、なにかまずいものでも食べさせられたような表情で俺に向かって辛辣な台詞を投げつけてくる。
 やっぱこうじゃなきゃね。逆に彼がここでふたつ返事で約束なんかしてくれたりしたら、頭とか身体とか、どこか調子が悪いのかなってかなり本気で心配になるだろうし。
 それくらい、この想い人は俺に対してつれない。
 いや、つれないっていうよりシャイだっていうのが正しいかなぁ。とにかく無意識で歯の浮くような台詞をさらっと言ってのけたりするくせに、こういう恋愛風味の会話は苦手らしくって、ちょっと振るととたんにもう意識しまくりで、しどろもどろしたり嫌そうな表情をしたり、赤くなったりでやったら可愛いわけ。
 だから俺だってそんなに得意ってわけじゃないけど、ついつい振っちゃうんだよね。
 大体さ、仕事着も着てないのにそういう台詞、俺だって平気で言えちゃうわけじゃないって。
 あれは別格。
 そして、新一も別格──って話がズレちゃったけど、ともあれ想像通りの反応をきっちりと受け取って、俺はさらにこれもあらかじめ頭の中の台本に書き込んでおいた返事を返した。
「バカじゃないよー。大事な人とのお出かけなら、やっぱりデートでしょ」
 すると新一は今度はすっぱいものを食べたような表情になって、それからちょっと困ったように眉を寄せてちいさく息を吐く。ため息じゃないけど、それになりそこなったみたいな、そんなアンニュイな吐息。ちょっと色っぽいよな、って不謹慎なこと考えたりもしちゃいそうな。
「悪ィな。その日は先約があるんだ」
「そっか……。先約があるならしょうがないよね」
 これもわかってたことだけど、俺はいかにもがっかりしたように肩を落としてみせた。
 だって当然だろう。新一の誕生日当日にかの幼馴染み嬢が彼をひとりで放っておくとは思えないし、自分の身を鑑みても俺はそのことに文句をつけられやしないし、つける気もないんだから。
 だから、承知していたのに訊いてみたのは、期待を込めた確認というところかな? もしくは、手順というか。
 そういうわけで次の瞬間にはからりと笑ってみせて、俺が子供の日の恩恵を受けてるなー、と思う理由になっている、かわりの約束をいよいよ取りつけることにする。
「じゃあさ、次の日はどう? 空いてる?」
「……事件がなきゃな」
 ──はい、チェックメイト。
 俺の最初の希望に添えなかった新一が、そう答えてくれるだろうことは予定調和で。
 まるでKIDの仕事をする時と同じくらい、予定していたシュミレーション通りに満足のいく結果を受け取った俺は、ささやかな達成感と満足感を得てにっこりと新一に微笑み返した。
 つまるところ、これがこの国民的休日を好きになった理由。誕生日当日に会えないかわりに、必ず翌日を丸々占有できるっていうのは、なかなかオツだとは思わない?
作品名:Another Birthday 作家名:にけ/かさね