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こた@ついった
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天使の歌声...一瞬一時を

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<天使の歌声>

 優しい歌声。美しい歌声。温かい歌声。全てを包み込む様な、それでいて全てを受け入れる様な歌声。幸福を知らせる鐘の様な歌声。それら全てが、あいつの歌声だ。
 天使の歌声だと、言うのだろうか。


 イタリアの家への最短ルートはスイスの領地を横断、だがそれをするのは命知らず、正規なルートを渡りイタリアの家へ向かっていた。
 町並みが徐々に変化してゆき、もう直ぐ着くのが解る。穏やかな美しいこの町はあいつそのもの。一歩進むごとに自分も穏やかな気分になってくる。
 今日、イタリアの家へ向かうのには訳がある。掃除だ。イタリアの家は決して散らかっている訳ではないが、余り掃除していないと言っており、綺麗とはいえやはり気になる。だから掃除しに行くんだ。イタリアはオーストリアの家で掃除婦のような仕事をしていた事があるらしいがその兄は破壊係だ。イタリア一人で掃除するのにはあの家は大きすぎる。だから手伝いという事で、まあ結局主導権を握るのは俺になるかもしれないが。
 イタリアの家が見えてきた頃、歌声が聴こえてきた。伸び伸びとした丁寧な歌声で、直ぐにイタリアだと解った。あいつの歌をよく聴いているからだろうか。
 このまま家に入って歌を中断させるのは勿体無いと思った。玄関まで着き、ドアノブを掴もうとしていたが、やめて、そのまま立ち止まる。もう暫くしてから、入ろう。
 静かな空気の流れるこの場所に綺麗に収まるイタリアの、天子の歌声と称すのが一番相応しい歌声に耳を傾けていた。


 歌が終わりまた静かになるとドアノブを回した。イタリア、と呼びながら足を踏み入れると先刻の歌声とは打って変わって明るい間延びした声の返事が返ってくる。次いで、イタリアがパタパタと駆け寄ってきた。
「ドイツ、チャオ!」
「ああ、お邪魔する。すまんな、菓子を持ってきていないが」
「別に良いよ、カンノーリがあるから、一緒に食べようー! あ、それよりこんにちはのハグして!」
「はいはい、ハグな」
 最近では挨拶にハグをする習慣は古風といわれるだろうが、イタリアの会うと必ずハグをする。両頬にキスをすると、「俺もー」と言われたので、屈んでキスを受ける。あの歌声を紡ぎだす唇は、優しい柔らかさを持っていた。
「今日は掃除するんだっけ」
「ああ、そうだ。だが休憩してからにしよう。さっき歌ってただろう?」