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こた@ついった
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天使の歌声...一瞬一時を

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 リビングに通されるとイタリアは定位置であるアイボリー色のソファの右端に腰掛ける。俺も定位置となったイタリアの隣へ座った。テーブルの上には飲みかけの、麦芽エキスに牛乳をあわせたものでカフェ・デ・オルゾーと言ったか、それが日の光に水面を輝かせており、その隣にはなにやら楽譜が置かれていた。
「うん、あのねー、これ今日楽譜屋さんが届けてくれて、早速歌ってみたんだ」
 楽譜を指差してチョコレート色の瞳を輝かせる。本当に歌が好きなんだな、とその様子を見て思った。こいつにとって歌はどの位置にあるのだろうか。音楽が好きなのは俺も同じで今まで多くの音楽家を生んだ地ではあるが、イタリアは、何というか、イタリア自身が音楽を尊び愛しているとでも言おうか。あいつは小さな存在であっても美しいと感じたものを素直に愛する。それに俺は惹かれたのかもしれんな。
「途中からしか聴いていなかったが、良いと思う。お前の歌声はほっとする温かさを持っている、な」
「本当? ありがとう! あ、カンノーリと何か飲み物持って来るねー」
「ああ、悪いな」
 イタリアは座ったばかりのソファから立ち上がり靴の音をさせてキッチンへ行く。
 何となく、楽譜を手に取り眺めてみるとイタリアが歌っていた時点で驚いたが、この歌は高音で、ボーイソプラノといったか、変声期前にソプラノの音域に恵まれた青少年男子が歌うものであった。イタリアは外見で言えば俺と同い年の二十歳で普段の声は成人男性と変わらない……否、少し高いかもしれない。……だからあの歌声が出るのか。あの歌声はボーイソプラノではなくカウンターテナーだったか?慣れない音楽用語に頭がくらくらした。
 まあ、何であれ、凄いと思う。
「お待たせー、カフェ・デ・オルゾーだよ! 俺ん家で一般的な飲み物、かなぁ。すっごく美味しいんだ!」
 カップとカンノーリの載った皿をトレーに、イタリアが出てきた。カンノーリの甘い匂いが漂う。
「ありがとう。カンノーリか、久しぶりに食うな」
「そういえばそうだったねー。最近はドイツん家でクーヘンとかだったからね」
 楽しそうな顔をしてトレーをテーブルに置き、皿とカップを並べると「食べて食べて!」とせかされる。クリームが零れ落ちない様気を付けながら、一本手に取る。口に入れると、ふわりとした甘みが広がった。
「美味しい?」