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こた@ついった
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novelistID. 1633
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天使の歌声...一瞬一時を

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 イタリアは懐かしむように笑った。イタリアにとって昔には何か心を揺らす思い出があるのか、切なげな表情を浮かべる。珍しいその表情に眼を奪われた。
 昔の事を殆ど記録に残していない俺とは違ってこいつは沢山の歴史をこの部屋の書物のように大切に保管している。辛い思い出でも、こいつは忘れずにとっておいているのだろう。俺との日々も、こいつは大切にしてくれているのだろうか。
「最近の写真はね、寝室にある棚のアルバムにあるんだ。日本がよく写真撮るでしょ、ドイツはとっておいてる?」
「ああ、勿論だ。アルバムではないが、箱にしまってある。あいつは本当に写真好きだよな……」
「だよねえ、でも良い事だと思うよ。一秒一秒を大切にしてる、て感じしてさぁ」
「確かに、そうだな。俺は余りそういうのが無いからな」
「そうなんだー。あ、じゃあさ! 撮ろうよ、写真!掃除記念日、みたいな感じな」
 パァッと花が咲くような笑顔でイタリアがスツールから立ち上がる。疲れはどこにいったんだ。
 俺の前に立って、顔を覗き込んでくる。切り替えが早い奴だな、と思った。まあ、こいつのこういうところも好きな要因の一つ、ではあるが。
「今撮るのか?」
「うん! カメラならあるよ、日本から貰ったんだー」
 それはかなり高品質そうだな……。日本の家の技術は本当に凄い。見習わなければならないところが沢山ある。
「今日の思い出をとっておくの。良いでしょ?」
「まあ、悪くは無いな……」
 思えば、こいつや日本と写真を撮るのは何かの記念日が殆どで、普段の生活では撮ることがない。偶には、良いかもしれないな。……偶には、ではないな。
「では、撮るか」
「やったー! じゃあ、カメラ持ってくる!」
「ああ」
 嬉しそうに笑って、イタリアは部屋を出ようとして立ち止まった。俺を振り返ると、
「写真、いつまでもとっておくよ、だからドイツも大切にしてね?」
 と呟くように言う。当たり前だろう、大切にする。こいつとの日々を今まで一時も忘れた事は無い。勿論、今日の事もいつまでも覚えていたいと思う。
 俺も立ち上がり、イタリアの傍に行く。
「ああ、勿論だ」
 笑顔を作るには難しいこの顔で、精一杯の笑みを湛えて、イタリアの柔らかいキャラメルブラウンの髪を撫でた。