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ささいな誤解とエトセトラ。

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必死で怒鳴っている間に、山本の身体が動いた。ふわりとした感覚とともに気がついたら立ち上がらされ、ぽんぽんと背中のほこりをはたかれている。
「や、ま、」
「あいつ、マジ、花火好きなのなー。……でも助かった」
山本はけろりとして笑った。先ほどまでの切羽詰った気配はまったく消えている。きつねにつままれたような気分でツナもつられて笑い返すと、再びどおーん、と爆発。山本はツナをかばい、呆れ顔で獄寺を見やった。
「あっぶねーなー、やめさせてくるわ」
「あ、う、うん」
山本はツナの髪をクシャリとなでて、大きく笑うと、獄寺の立つ土手の上に駆け上がっていった。
途中で振り向いた。まじめな声が大きく響く。
「ツナ、泣かせねーですんで、よかった! ごめんな、もう暴走、しねーから」 
「……山本」
ツナはこう解釈した。
やっぱりさっきのは気の迷いだったんだ。もうあんなことはしないんだ。山本が普通に戻ってくれて、よかった。
心の底から安堵がこぼれた。ツナは照れ笑いした。
「……うん!」
山本は嬉しそうににっこりし、ツナに背を向けると、「ごーくーでーらー、まあまあ落ち着けってー」と叫びながら残りの土手を登り始めた。
ツナはしみじみとした安心感を味わいながら、その背中を見送っていた。この一週間の不安がウソのようだ。誤解が解けて、本当によかった。これで元通りの友だちだ…。


「はたして、そーかな」
「うわあ!?」
突如、となりでのんきな声がしたので、ツナはびくりとして見下ろした。
「り、リボーン、いたのか、驚かせんなよ! どういう意味だよ今の」
「さあな」
「あーっ、それよりおまえ、見てたのか!? 助けろよバカ!」
「ん? 邪魔してよかったのか?」
「あ、あのなあっ!」
やはり見られていたのだ。ツナは顔中が熱くなるのを感じて、照れ隠しに怖い顔をして見せた。あまり迫力はなかったが。
「あれは山本の気の迷い! 邪魔もなにもねーの!」
「だったらいいけどな」
リボーンの瞳が、きらりと光った。なに言ってんだよ、と眉をひそめるツナに背を向けて、すたすたと歩き出す。
「帰るぞダメツナ。今日の分の課題がまだだ」
「え? でも、獄寺くんを止めなきゃ……」
ツナは、土手の上でなにやらもめている山本と獄寺を指差した。だがリボーンはあっさりと、
「あーゆーのは割って入ったってしょーがねーんだ。熱くなってるからな。恋のさやあてってやつはな」
「なんだって? 終わりのほうよく聞こえなかった」
「ん?」
リボーンは振り向いて、不敵な笑みを浮かべた。 
「面白れえことになったなって言ったんだ」
「…………はあ」
なぜだろう、ツナはそのとき、なんとも知れない不安に心臓が鼓動を早めるのを感じた。

そう、まるで。

騒ぎは終わったのではなく、これから始まるかのようだった――。