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ドッペルゲンガーのともだち【鉢雷現パロ】

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 正直言って、三郎は怒りの頂点にいる。
 決して二人には言えないが、今日はやけに他人と目が合うな、俺の高校デビューは順調すぎるぜ、と機嫌が良かったのだ。そういうわけで注目の理由が分かり、勘違いが恥ずかしくてたまらないのだ。
 恥をかかせた奴の面をおがんでやる! どうせなら殴ってやる! とさえ思っていた。

 隣席のユキは、不破雷蔵と中学が同じだったらしく、三郎の顔をみてすぐに彼と勘違いしたそうだ。確かに、昨日ユキに親しげに話しかけられ、随分と適当にあしらった憶えがある。
 すぐに三郎が雷蔵ではないことに気づいたユキは、その後本物の雷蔵も見つけ、同じ顔の存在に気づいたという。
「似過ぎよ、あんたら。血繋がってるんじゃないの?」
「俺に兄弟はいない!」
 そのまま立ち上がった勢いで、三郎は今に至る。目指す組はもう目前で、八左ヱ門と、特に勘右衛門は心配そうにおろおろしている。
「やめよう、な? 三郎ってば」
「勘右衛門、もう諦めよう。こういうときのこいつは止められない」
「ご名答」
 ニヤリと笑ってからB組の戸をスライドさせた三郎は、よく誉められる美声を使い、威嚇がてら不破雷蔵の名を呼んだ。

「どいつだ!」
 戸に近い席には……女子の塊が一つ。あとはばらばらと教室内に人が散っている。
 どこだ、どこだ。探していると、小さな声があがった。

「あの、僕です」

 教室の中央あたり。右手を上げて、少しよろけながら立った人物。
 こいつが、不破雷蔵。
 口をぽかんとあけて、見ていいものかどうかを迷うように、ちらちらと目をそらしたりしている。(心なし、顔が青い)

 細めの輪郭の真ん中に、先が少し丸い鼻があった。髪は天然の癖毛のようで、ところどころ元気にはねている。色にいたっては、三郎のものと寸分違わないものだった。
 三郎と大きく違うのは制服で、このあたたかな陽気に、不破雷蔵はカーディガンを着ていた。それも、親に「大きいの買いなさいね」と言われたことが見え見えの、ぶかぶかのもの。少し首を引っ込めてこちらを伺っている状態では、袖から手なんか殆ど出ておらず、形の良い爪の先がのぞいているだけだった。

 うん。なんというか、実にかわいい。
 正直、三郎の好みだった。
 三郎の好み。それは……「俺」。

 瞬間、三郎は何かおかしい扉を開いてしまった。