コイゴコロ
セリスがマッシュと結婚するのかと考えると、胸が苦しくてどうしようもなかったのは何故。
何故違うとわかってこんなにほっとしたのか答えは簡単だった。
すぐそこにあったのだ。
「私…マッシュが好き、好きだったんだ」
“恋”をすることが、人を愛することがこんなにも苦しいことだとは思わなかった。
だけど、これがマッシュへの思いなのだと知ると、そんな苦しさですら、大切にしたいと思えた。
「私、私…」
思い立ったよう、すっと立ち上がるとティナは制止するセリスの声も聞こえないかのように寝間着の軽装のまま部屋を飛び出していた。
熱があるからか、頭がくらくらとしたが、とにかく今はマッシュの顔が見たかった。
声が聞きたかった。
「マッシュ!」
女性人もおらず、男だけで食事をとっていた中に、突然寝込んでいるはずのティナが寝間着で入ってきたのだ、一同は呆気にとられてマッシュのもとへ駆け寄って行くティナをただ目で追うしかできなかった。
「ティ、ティナ。どうしたんだ。もう大丈夫なのか?まだ寝てなきゃ…」
息を切らせて自分の下へ来たティナに慌てて席を立つとティナの今にも倒れこんでしまいそうに頼りない身体を支えた。
「わたし、私わかったの。私、マッシュが好き!好きなの!」
そうやって父親に無邪気にじゃれつく幼子のように抱きつかれ、マッシュの顔は一瞬固まり、それからさっと面白いくらいに真っ赤になった。
一同は呆気にとられ、ロックの口元からくわえていたスプーンが落ちる。
それがスイッチのように、まるで湯気が出るように真っ赤になったマッシュの身体がそのまま後に背中から倒れる。
「マッシュ??どうしたの?」
突然倒れたマッシュに慌ててティナが心配そうに覗き込んでいるのを、最初に冷静になったエドガーはなんともいえない力の抜けた笑顔でやれやれと手を上げたのだった。
「修行も好きな子には形無しか」
突然の告白事件は飛空艇という閉鎖された空間のなかでしばらく大騒ぎになってしまったのは仕方がないことなのだろう。
その後、今度はマッシュが知恵熱で寝込むことになり、心配そうに甲斐甲斐しく様子を見に行くティナの姿がしばらく飛空艇の中で見かけられたのだった。