絶対安静
幽が謝る必要なんかない。謝らなきゃいけねえのは、おれ。だっておれがこわれなかったら、もしかしたら幽が大けがしてたかもしれない。なんだか目の奥がきゅうっとして涙がでそうになった。がまんすると鼻の奥がつんと痛んだ。それでも、なんとかつぶやく。
「……ごめん」
蚊の鳴くようにちっちゃな声だったのに、幽がふるふると首を振る。それだけで、許されたようにおもえて、とうとう我慢できずに、ぼろぼろと涙がこぼれでた。
幽は、おれが泣いてることなんて気にせずに、サイドテーブルからがちゃがちゃとスプーンを取り出した。べりべりっとプリンのふたをめくって、スプーンでひとくちすくう。「あーん」と言うのにつられて、大きくあけた、おれの口の中にひょいっと放り込む。 舌の上でとろけたプリンは甘い筈なのに、なんだかしょっぱくて、なのに、うまかった。