鳥の歌
結局、今まで自分はずっと桂に同情されて続けてきただけ。
自分はなにも桂には与えてこなかったのだ。
少なくとも、桂はそう認識しているのだろう。
それが、なんだか悲しい。
悲しいと感じることがむなしい。
銀時は足を止め、今まで歩いてきた道を振り返る。
もうそろそろもどるべきだと思った。
しかし、その先には悲しみと苦しみしかないような気がした。
同じ屋根の下で同じ釜の飯を食った仲間が、護りたいと思った仲間が、大地に無惨な亡骸となって倒れているのを見るのは、もうたくさんだった。
ほしいと思うものはいつも手からすり抜けたように、自分の手は役立たずなのだ。
そんな無力感にさいなまれるのも、つらかった。
顔をまえにもどす。
そこには自由があるような気がした。
地獄のような戦場も、仲間の遺体も、叶わない想いもないように思えた。
昔、まだ親元にいたころ、大空を鳥が悠然と飛んでいる姿を見て、あんなふうに飛べる翼がほしいとうらやんだことを思い出す。
あのとき、どこでもいいから遠くへ行きたくてしかたなかったのだ。
逃げたかったのだ。
それは今も同じだ。
息の詰まってしまうような苦しみから逃れたい、過去という重い足かせから解放されたい。
どこか遠くへ、だれも自分の過去を知らないところへ、飛んでいきたい。
足が動いた。
屋敷へもどる方向ではなく、まえへ。
雪が降っている。
自分がもどらなければ桂は悲しむだろうか。
いや、きっとそんなことはない。
そう否定して、歩き続ける。