鳥の歌
四、
天上から桜の花びらが舞い落ちるように白いものがひらひらと降ってくる。
ぼたん雪だ。
雪の降るなか、銀時はひとり歩いていた。
潜伏先としていた屋敷を飛び出してからどれぐらい経っただろうか。
空は朝からずっと灰色がかった白で、太陽は一度も顔を出していなくて、今は何時なのか判断できない。
潜伏先を飛び出すきっかけとなったことが、頭によみがえる。
幕府の権力がほぼ天人に握られてしまったことにより、昔は数多かった攘夷軍のほとんどが壊滅、もはや攘夷など成せるわけがないという空気が国に広がるなか、銀時たちは勝ち目のない戦に出て、結果やはり負け、あまりにも多くの仲間を失った。
どうにか見つけた潜伏先では、生き残った志士たちは立ちあがる気力もないといった様子で座り込んでいた。
そして、銀時は自分に割り当てられた部屋に行き、そこにいた桂に手を伸ばした。しかし、その手ははね除けられた。
今は余裕がないからやめてくれ、と言われた。
その台詞に腹が立った。
俺はおまえに余裕があるときにその余裕を恵んでもらってるだけなのかよ、と言葉を投げつけた。
すると、桂は顔をしかめ、うるさい頼むから俺をひとりにさせてくれ、と怒鳴った。
だから、銀時は、ああそうかわかったお望み通りひとりにしてやる、と怒鳴り返して、部屋を飛び出し、屋敷からも出たのだった。
銀時は雪の降る道を歩きながら思う。
こんなときだから自分は温もりを与え与えられたかった。
だが、桂にしてみれば自分は与えるだけで与えられることはないと思っていたのだろう。