鳥の歌
「それは余裕がなかったからだ」
「結局それに行き着くのかよ」
「ああ、そうだ」
桂は少し笑う。
その隣に、銀時は座った。
「おまえ、余計なことはよく喋るくせに、肝心なことは言わなさすぎだ」
「ひとのことを言える立場か。おまえだって肝心なことはなかなか言わないではないか」
「はァ? 俺はちゃんと言ってるじゃねーか」
「どこかだ。さっき、おまえが言うまで、おまえが俺のことをどう思ってるのか、さっぱりわからなかったんだぞ」
そう言われてみれば、確かに、さっきのアレに類するようなことは一度も言ったことがなかったような気がした。
「だから、おまえはほしいものを手に入れたんだから、俺はもういいのだろうと思った」
「なんだそれ、また意味がわかんねェ」
「あのふたりのことだ。おまえ、ほしかったんだろう、家族が」
さらっと桂は正解を言い当てる。
心臓に悪い。
「……いや、アレはさー、こーゆーたとえは嫌なんだけど、俺の子供みてェなもんだからな、いつかは旅立っていくもんだろ。それを俺は祝いつつ、内心すごく寂しいみたいな感じのアレで」
「変な話し方をするな。だが、役割が違うということはわかった」
「そーゆーこと。で、おまえはいいのか?」
「俺は日本の夜明けが第一だから、先のことは約束できん」
「じゃあ、先のことじゃなくて、今は?」
その眼をじっと見て、問う。
すると、桂は答えた。
「今は、一緒にいたい」