鳥の歌
その答えをある程度は覚悟していたものの、実際に言われてみるとやはり胸にこたえる。
銀時は身体を退いた。
そして、話す。
「……ガキどもを見て、なんとなく、先のことを考えた。明日とか明後日とかじゃなくて、もっとずっと先のことだ。ずっと先のこと考えて、思った。そのずっと先に、おまえが一緒にいてくれたらいいって、な。ただそれを伝えたかっただけだ。だから、別に気にすんなよ」
今さらだからしかたない、と思う。
桂が悲しんだかどうかは関係なく、自分には桂を置いて逃げた過去があるのだ。
銀時はソファから立ちあがる。テーブルを挟んで向かい側にあるソファに移動しようと思った。
二歩進んだとき、桂の声がした。
「銀時」
名を呼ばれたので、足を止め、振り返る。
桂の眼差は真っ直ぐに銀時へと向けられていた。
「その特定の相手の名前を聞かなくていいのか」
銀時は眉根を寄せる。
「俺の知ってるヤツか」
「ああ、おまえが一番よく知っているヤツだ」
そう告げられて、俺が一番よく知っているヤツってだれだ、と考える。
やがて、答えが頭にひらめく。
「もしかして、それは俺か」
「それ以外ありえん」
桂は断言した。
「ありえなくねェだろ。俺はおまえを置いていったし、だいたい、おまえは俺に同情してただけなんだろ」
「置いていった云々は見解の相違だ。俺はおまえに置いていかれたと思ったことはない。それから、俺は男にやられるのは真っ平だと思っていたし、今も、おまえ以外はそうで、同情だけで流されるほど意志は弱くない」
「じゃあ、なんで、あのとき、余裕がないからやめろって言ったんだ」
「あれは、……というか、あんなことにおまえはこだわっていたのか?」
桂はあきれたような表情になる。
そして、ふたたび口を開く。
「あれは、余裕がなくて、やつあたりでおまえにひどいことを言ってしまいそうだったから、ひとりにしてくれと頼んだんだ」
「それさァ、あのとき言ったことじゃあ、全然伝わらねーって」