鉛筆ロイと消しゴムエドワードの冒険
この国では、鉛筆と消しゴムは二人セットで行動します。その鉛筆と消しゴムの中でもロイとエドワードは特に仲良しの一対です。今日も二人で手を繋いであっちこっちへと冒険に出かけます。仲が良い理由はたった一つです。鉛筆のロイは絶対に書き間違えなどしないからなのです。
「いいか、ロイ!!真っ白で美しいオレ(=消しゴム)が汚れるだろう!汚したらぶん殴り決定っ!」
鉛筆の書き間違えを消すことがケシゴムの使命です。けれど「ちっさい豆粒みたいな消しゴムエドワード」にとって汚れることよりも、その身が一ミリでも低くなることのほうが嫌なのでした。
削られて小さくなるなんて……。それはエドワードにとってこれ以上もないほどの恐怖なのでした。
「はいはい。わかっているよ、エドワード」
鉛筆のロイはにっこりと笑います。ロイはエドワードが大好きなので、彼の顔を曇らせてはならない…と一文字一文字ていねいに、そしてゆっくりと書き間違いなど決して起こさないように書くのです。
二人はにこにこと微笑みながら毎日のように楽しい冒険に出かけます。冒険の時は必ず手を繋いで行くのです。えっちらおっちらペンケースのお家から這い出て行って、まずは机の上の冒険です。
広大な机の上はまるで海のようです。さて、今日はどんな出会いが二人にはあるのでしょうか……。
ペンケースのお家からはい出して、広大な机の上の荒野を彷徨います。トコトコずんずん歩いて行くとノートさんに出会いました。
「やあ、こんにちは。ノートさん」
「よっ!ノートさん!」
元気に二人は挨拶します。挨拶はこの国でも大事なことですからしっかりとしなくてはなりません。
「こんにちは。鉛筆さんと…豆消しゴム君」
「豆って言うなーーーーーーーーっ!!」
むうっと消しゴムエドワードは頬を膨らましました。
「まあ、まあエドワード…。そんなふうにふくれても可愛いだけだよ?」
「すまん、すまん。お詫びに……そうだ!何か描いていくかい?」
ノートさんはパラパラとページをめくります。小ささな「あいうえお」の文字や「1+1=2」などがたくさんたくさん書かれています。
「エドワード?何か書かせてもらおうか?」
「……………………へのへのもへじ……」
ぼそっとエドワードは呟きます。
「よしきた。はいどうぞ」
ノートさんは机の上にコロンと寝転がりました。ロイは一言「失礼」と告げてエドワードのリクエスト通りにへのへのもへじを書いてみました。
「どうだい、エドワード。かっこいい『へのへのもへじ』だろう?」
ロイはえへんと胸を張ります。
「……もっとかっこいいの書けよ」
ちょっとだけエドワードの機嫌が直ってきたようです。ロイはもう一つ、と今度はスリムなへのへのもへじを書いてみました。
「どうだい?」
「ん……。もっと書け」
だいぶ機嫌が直ったようです。
「いいだろう。では……」
そうしてロイはノート1ページ分、へのへのもへじを書きまくりました。「J」の文字だけを大きくした「HENOHENOMOHEJI」などとローマ字書きしたりしてみました。「へのへのもへじ」に手をつけてみたりもしてみました。そしてノート一面に書いているうちに、ロイの鉛筆の先は丸く削れていってしまいます。
「ああ、そろそろ鉛筆削りのところに行かねばな……」
「あー、じゃあ寄ってから家に帰ろうぜ♪」
エドワードはすでに上機嫌です。ですからちゃんとノートさんに挨拶してから帰ります。
「ノートさん。今日は楽しかったです。ありがとな♪」
機嫌を直したエドワードにノートさんも安心したようです。
「こちらこそ楽しかったよ。また会えたらぜひ今度はパラパラ漫画でも書いてくれな」
こうして今日の鉛筆ロイと消しゴムエドワードの冒険は終わりました。二人は来た時と同じように手を繋いで、仲よくペンケースのお家へ帰るのです。
さて今日も今日とて手を繋ぎ、二人は冒険へと出かけます。
「ロイ、見ろよ!!」
おや、さっそくエドワードが何かを見つけたようですね。
「うん?どうした、エドワード」
エドワードが指をさしたその先をロイは見てみます。すると……。
「机の引き出しが開いてるんだ!なあ、ロイ……」
机の引き出しなど、いまだかつて開いていたことはありません。いつもピッシリと閉められていたのです。机にはロイとエドワードがいつもいるような表面だけではなく、引き出しという洞窟のような秘密の小部屋のような世界があることはロイもエドワードも知ってはいました。けれど…。ごくりと鉛筆のロイは喉を鳴らしました。冒険してみる価値はあるのかもしれない。だが、万が一にでもエドワードに危険があるのなら…。ロイは迷いました。自分はともかくエドワードに何かあったら…。一方エドワードは新たなる冒険の予感にわくわく顔です。
「なあ、ロイっ!行ってみようぜ」
エドワードはぐいぐいとロイの手を引っ張ります。
「わかったわかった。エドワード…でも慎重に行こう。机の上と引き出しの中では世界が違うかもしれないのだからな……」
二人は手をしっかりと繋いで、引き出しの中へと入って行きました。
どきどきどきわくわくわく。
高鳴るのは心臓の音です。さて、どんな出会いがあるのでしょうか…?
初めてやってきた引き出しの世界。エドワードとロイが暮らす机の上の国とは何やら様相が異なります。まず第一に暗いのです。明かりは空いている引き出しの隙間から差し込んでくるだけです。
「……ちょっと、ドキドキするな」
エドワードはロイと繋いだ手に力を込めます。
「ああ。かなり暗いな。……危険があるようなら机の上に帰るとしよう」
けれど、エドワードはきょろきょろと、あちらこちらを探ります。冒険、なのです。今日は何かドキドキ出来ることと出会えるかもしれないじゃないか。と握った手には力が入ります。でも心のどこかではほんのちょっぴり怖いかもしれないという気持ちがエドワードにはありました。
……こんなに薄暗いと。気が付きたくない何かに出会ってしまうかもしれない。
具体的に何かとはっきり分からないだけに不安は少しずつ大きくなります。
……でも、オレは平気。ロイと一緒なら。ロイと手を繋いでいるから。きっと怖いことなんて少しもない!
期待と不安を綯い交ぜにしながらそれでもトコトコトコトコと、エドワードは進むのです。
すると、この薄暗い国の中で何かぱっと目を引かれるようなカラフルな色が飛び込んできました。赤色、青色、黄色に緑色……暗いこの世界だからこそよりいっそう輝く美しさ。それは十二色の色鉛筆のお姉さんたちでした。
「あら?見かけない子達ねえ……?」
「鉛筆さんに消しゴム君ね、こんにちは」
身にまとうのは鮮やかな色。その色を引き立てるようなにこやかな笑み。
「まあ、可愛らしい消しゴムさんに…鉛筆さんはかっこいいわねえ…」
綺麗な色鉛筆のお姉さんたちに囲まれて、エドワードは真っ赤になって返事をしました。
「ここここここんにちは……」
「いいか、ロイ!!真っ白で美しいオレ(=消しゴム)が汚れるだろう!汚したらぶん殴り決定っ!」
鉛筆の書き間違えを消すことがケシゴムの使命です。けれど「ちっさい豆粒みたいな消しゴムエドワード」にとって汚れることよりも、その身が一ミリでも低くなることのほうが嫌なのでした。
削られて小さくなるなんて……。それはエドワードにとってこれ以上もないほどの恐怖なのでした。
「はいはい。わかっているよ、エドワード」
鉛筆のロイはにっこりと笑います。ロイはエドワードが大好きなので、彼の顔を曇らせてはならない…と一文字一文字ていねいに、そしてゆっくりと書き間違いなど決して起こさないように書くのです。
二人はにこにこと微笑みながら毎日のように楽しい冒険に出かけます。冒険の時は必ず手を繋いで行くのです。えっちらおっちらペンケースのお家から這い出て行って、まずは机の上の冒険です。
広大な机の上はまるで海のようです。さて、今日はどんな出会いが二人にはあるのでしょうか……。
ペンケースのお家からはい出して、広大な机の上の荒野を彷徨います。トコトコずんずん歩いて行くとノートさんに出会いました。
「やあ、こんにちは。ノートさん」
「よっ!ノートさん!」
元気に二人は挨拶します。挨拶はこの国でも大事なことですからしっかりとしなくてはなりません。
「こんにちは。鉛筆さんと…豆消しゴム君」
「豆って言うなーーーーーーーーっ!!」
むうっと消しゴムエドワードは頬を膨らましました。
「まあ、まあエドワード…。そんなふうにふくれても可愛いだけだよ?」
「すまん、すまん。お詫びに……そうだ!何か描いていくかい?」
ノートさんはパラパラとページをめくります。小ささな「あいうえお」の文字や「1+1=2」などがたくさんたくさん書かれています。
「エドワード?何か書かせてもらおうか?」
「……………………へのへのもへじ……」
ぼそっとエドワードは呟きます。
「よしきた。はいどうぞ」
ノートさんは机の上にコロンと寝転がりました。ロイは一言「失礼」と告げてエドワードのリクエスト通りにへのへのもへじを書いてみました。
「どうだい、エドワード。かっこいい『へのへのもへじ』だろう?」
ロイはえへんと胸を張ります。
「……もっとかっこいいの書けよ」
ちょっとだけエドワードの機嫌が直ってきたようです。ロイはもう一つ、と今度はスリムなへのへのもへじを書いてみました。
「どうだい?」
「ん……。もっと書け」
だいぶ機嫌が直ったようです。
「いいだろう。では……」
そうしてロイはノート1ページ分、へのへのもへじを書きまくりました。「J」の文字だけを大きくした「HENOHENOMOHEJI」などとローマ字書きしたりしてみました。「へのへのもへじ」に手をつけてみたりもしてみました。そしてノート一面に書いているうちに、ロイの鉛筆の先は丸く削れていってしまいます。
「ああ、そろそろ鉛筆削りのところに行かねばな……」
「あー、じゃあ寄ってから家に帰ろうぜ♪」
エドワードはすでに上機嫌です。ですからちゃんとノートさんに挨拶してから帰ります。
「ノートさん。今日は楽しかったです。ありがとな♪」
機嫌を直したエドワードにノートさんも安心したようです。
「こちらこそ楽しかったよ。また会えたらぜひ今度はパラパラ漫画でも書いてくれな」
こうして今日の鉛筆ロイと消しゴムエドワードの冒険は終わりました。二人は来た時と同じように手を繋いで、仲よくペンケースのお家へ帰るのです。
さて今日も今日とて手を繋ぎ、二人は冒険へと出かけます。
「ロイ、見ろよ!!」
おや、さっそくエドワードが何かを見つけたようですね。
「うん?どうした、エドワード」
エドワードが指をさしたその先をロイは見てみます。すると……。
「机の引き出しが開いてるんだ!なあ、ロイ……」
机の引き出しなど、いまだかつて開いていたことはありません。いつもピッシリと閉められていたのです。机にはロイとエドワードがいつもいるような表面だけではなく、引き出しという洞窟のような秘密の小部屋のような世界があることはロイもエドワードも知ってはいました。けれど…。ごくりと鉛筆のロイは喉を鳴らしました。冒険してみる価値はあるのかもしれない。だが、万が一にでもエドワードに危険があるのなら…。ロイは迷いました。自分はともかくエドワードに何かあったら…。一方エドワードは新たなる冒険の予感にわくわく顔です。
「なあ、ロイっ!行ってみようぜ」
エドワードはぐいぐいとロイの手を引っ張ります。
「わかったわかった。エドワード…でも慎重に行こう。机の上と引き出しの中では世界が違うかもしれないのだからな……」
二人は手をしっかりと繋いで、引き出しの中へと入って行きました。
どきどきどきわくわくわく。
高鳴るのは心臓の音です。さて、どんな出会いがあるのでしょうか…?
初めてやってきた引き出しの世界。エドワードとロイが暮らす机の上の国とは何やら様相が異なります。まず第一に暗いのです。明かりは空いている引き出しの隙間から差し込んでくるだけです。
「……ちょっと、ドキドキするな」
エドワードはロイと繋いだ手に力を込めます。
「ああ。かなり暗いな。……危険があるようなら机の上に帰るとしよう」
けれど、エドワードはきょろきょろと、あちらこちらを探ります。冒険、なのです。今日は何かドキドキ出来ることと出会えるかもしれないじゃないか。と握った手には力が入ります。でも心のどこかではほんのちょっぴり怖いかもしれないという気持ちがエドワードにはありました。
……こんなに薄暗いと。気が付きたくない何かに出会ってしまうかもしれない。
具体的に何かとはっきり分からないだけに不安は少しずつ大きくなります。
……でも、オレは平気。ロイと一緒なら。ロイと手を繋いでいるから。きっと怖いことなんて少しもない!
期待と不安を綯い交ぜにしながらそれでもトコトコトコトコと、エドワードは進むのです。
すると、この薄暗い国の中で何かぱっと目を引かれるようなカラフルな色が飛び込んできました。赤色、青色、黄色に緑色……暗いこの世界だからこそよりいっそう輝く美しさ。それは十二色の色鉛筆のお姉さんたちでした。
「あら?見かけない子達ねえ……?」
「鉛筆さんに消しゴム君ね、こんにちは」
身にまとうのは鮮やかな色。その色を引き立てるようなにこやかな笑み。
「まあ、可愛らしい消しゴムさんに…鉛筆さんはかっこいいわねえ…」
綺麗な色鉛筆のお姉さんたちに囲まれて、エドワードは真っ赤になって返事をしました。
「ここここここんにちは……」
作品名:鉛筆ロイと消しゴムエドワードの冒険 作家名:ノリヲ