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竜ヶ峰帝人の困惑

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「正臣・・・大変だよ、僕今気付いたんだけど」
「な、なんだどうした。そんな真剣な・・・」

西日がキツイ放課後の教室の中で、帝人は突然気がついた。

「僕って、ものすごく趣味が悪い?」

うっかりしていたんだけど、臨也さんってものすごくアレな(いわゆる痛い)人じゃなかったっけ?
そう続けると、正臣はなんか腹の立つ表情で、しみじみと言った。

「・・・・・あぁ・・お前、気づいてなかったのか・・・」
「・・・やっぱり」

照りつける西日を見て

(あぁ早く帰ってあの人構ってあげないと)

と帝人は思ったことを意識してしまって気付いた。
この考えはもしかしなくても母親の考え方、むしろ倦怠期に入った夫婦の考え方ではないだろうか、と。
ついでに言うと、こんな考えを持つようになったのはどこぞの真っ黒な情報屋兼恋人のせいだ。
イザシズ(シズイザ?)の誤解がありつつも付き合うことを決めた年上の恋人と、泣き落とし・脅迫・土下座の3コンボで同居することになったのは付き合ってから半年にも満たないある日のこと。
ちなみにこの3コンボの合間合間には、帝人よるボールペン・ライターの攻撃が入る。理由はうざかったから、である。

最終の土下座によってあまりにも可哀そうに思い始めた同居だったが、帝人にとっては意外と住み心地は良かった。
事務所の方へ行くと、波江の「あいつの面倒みるなんてざまぁw」という視線に時々イラついたものの、家賃の心配はないし、空調はきいているし、部屋は広いしパソコンは使いたい放題だしで、ケチをつける部分のほうが少なかった。
何しろ実家にいる時のように、起きたらご飯はできているし、洗濯と自室の掃除は自分でしているけれどそれ以外はほぼ丸投げだ。
帝人が一番危険だと危惧していたのは貞操だったが、これは案外無事だった。
それもこれも折原臨也が想像以上に馬鹿、いや、奥手、純情、だったことだ。
ちゃんと自室も鍵付きで用意してもらえたし、臨也の相手をしなきゃいけないことが一番面倒かなぁと帝人自身恋人甲斐もなく思っていたが、本当にそうだった。

何しろ同居(臨也に言わせれば同棲)生活の初日から帝人は実家(と言う名の池袋のボロアパート)へ帰ることになったのだから。
原因はパソコン内にあった『帝人君フォルダ』だった。
臨也は情報屋の割に、あっさりとパソコンを帝人に明け渡した。

「好きに使っていいよ、俺のものは君のもの。そして君は俺のもの」

というのがその際のセリフだったが、後半は耳に蓋をして聞かなかったことにした。
むしろ臨也にとっては快挙というべきセリフだったので、逆に聞いておいて後でからかった方が帝人にとっては良かったのかもしれないが、その時はパソコンにもう夢中だった。
最新型のパソコンをいじる楽しみに集中していたが、その時に発見したそのフォルダを臨也は嬉しそうに「あ、見つけちゃった?」と言ったのだ。
だから帝人も軽い気持ちでそれを開けた。ら、後悔した。
どこを見ても盗撮写真、学校・家・街中、あらゆるところでの写真だった。
がくがくと震える手で、それでもとてつもないスピードでフォルダごと削除する。
どこぞの新世界の神信者のように「削除削除削除」と呟き続ける帝人に、臨也はなぜか照れながら「大丈夫だよ、バックアップは取ってるから!」と告げた。

(うっかりしていた・・・!)

般若寸前の表情の帝人がとっさに思ったのはそれだった。
臨也と付き合うことになった数日後、なんとなく家の大掃除を行った際に発見したカメラ。
どう見ても盗撮用のそれに驚き怯えた帝人は、一応年上でこういったことにも詳しいだろう恋人に「こんなものが・・」と相談したら、とても良い笑顔で「あ、見つけちゃった?」と同じセリフを吐いたものだった。
その時は男の証明たる部分を全力で蹴りつけることによってカメラの撤去をさせたものだったが、その時に臨也に言った言葉は「カメラ撤去してください。さもなくば女性にします」というものだった。
ということはつまりあげ足を臨也がとって、「カメラは撤去したよ!でも撮ったものは処分しろとは言われてない!」と主張するに決まっている。
そしてそれは正しかった。

「あの時カメラは撤去しろって言われたからちゃんとしたけどさ、撮ってたもの消せって言われなかったからね。これを見たら俺の愛がわかるだろ?いつだって俺は君を見ていた!なぜなら俺は君を愛しているからだ!あははバックアップも俺の手の届かないところにあるから、もう消せないよ!」
「波江さあぁぁん!!矢霧くんの学校の様子教えますから、今すぐに臨也さんの僕の写真が入ったメモリを探してください!」
「これよ。確かに渡したわ。だから誠二の・・・いえ、写真はないの?」
「明日撮ってきます。感謝します波江さん」

という取引があった。
この時臨也は波江の足の下だったが(ヒールが頭に食い込んでいた)次の日には回復して、実家へとんぼ返りした帝人にまた土下座して同居(というよりむしろ復縁)を頼み込んだ。
どうも帝人は臨也の土下座に弱く、仕方ないですね・・と住居を臨也の家に移したのだったが、それからの生活は前述したとおりそれなりに快適だった。
本当に折原臨也の面倒は、本当に面倒だったが。

作品名:竜ヶ峰帝人の困惑 作家名:ジグ