魔王と「 」
さ迷う視線が、粉々になった精密機械の欠片に止まる。その瞬間、黒い瞳を染め上げた色は、何よりも静雄の焦燥を掻き立てるものだった。
「静雄さん、」
そして、彼は遂に待ち焦がれていた返答を聞いた。
もうどこにも行かなくていい。俺はお前のものだ。お前は俺のものだ。お前のためなら何でもしてやる。愛してる。愛してる、愛してる、愛してる、愛してる愛してる愛してる愛してるあいしてるあいしてるあいしてるあいしてる
堅く強く抱きしめられた腕の中、睦言のような言葉が降ってくる。
ケダモノの哄笑が聞こえる。遂に手に入れたと歓喜を喚きちらす声が。帝人の頭の中で木霊する、浅ましい声。それは確かに帝人自身の声だ。歪んでいく。狂っていく。いつだって、きっかけは静雄だった。あの時だってきっと、背を向けたのがあなたでなければ。
(そうやって、愛していると言って、僕のものになると言って、僕から全てを奪っていくんですね)
これで、全ての逃げ道は閉ざされた。
もういいだろうと満足げに笑う声に、同調する。もういい。だって手に入れた。これでもう、
(あなたは僕のもの)
透明な涙は砕け散った。後に残った残酷な喜悦が囁く。奪われたならば奪い返せばいいと。
(僕もあなたも傷つける世界なら、支配してしまえばいいでしょう)
二人を恐れされるものも傷つけるものも全部全部排除してしまえば。静雄さえいればそれが叶う。笑みさえ浮かべることないまま、目を閉じた帝人は、縋りついてくる男の背に腕を回した。
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大分遅くなりましたが、完結です。
18禁になりそうになったので、何度も軌道修正。その結果、青葉が酷い目にあった。
ヤンデレはエゴと愛の押し付け合いでどこまでもすれ違ってしまうのが理想です。そしてお互いに夢を見過ぎなのが、静帝だと信じています。
えげつない感じの話ばかり続いているので、次はハッピーエンドのが書きたい。