14才の母シリーズ(カズケンカズ/サマウォ)
佐久間は、小磯健二という友人を数学という彼の得意とする一分野を除けばいたって平凡な男子高校生だと思っていた。思っていたのに、それが思い違いだと知らされて初めて佐久間は健二が抱えていた胸の奥にぽっかりと空いた大きな空洞のようなものを知った。
ぽっかりと空いてしまった空洞を満たす為に、常識も良識も倫理観も道徳も、全部を捨てて望むものだけを欲しようとする健二をおそろしいと佐久間は思った。おそろしくて、悲しいと思ったけれど、そんな親友を否定できるほどに佐久間は非情にもなりきれなかったから、道を踏み外そうとしている親友を止めることも出来ずに、言葉を飲み込んだ。
それが、キング・カズマがOZから姿を消す1ヶ月ほど前、2月の終わりも間近の寒い日のことだった。
2010.09.01
作品名:14才の母シリーズ(カズケンカズ/サマウォ) 作家名:ふちさき