03:見誤ったオージェ効果
どういうことだ、いきなり連絡先を訊かれるとは。グリーンは一体何を考えている。おかしい、こんなまだ交流も何もほんの少ししかない俺のソレを訊いたところで、何の得があるというのだろう。
ぐるぐると眩暈がしそうな俺とは正反対に、グリーンは眉間に皺を寄せて思案し始めていた。状況を整理したい俺に、追加の攻撃を加える。勘弁してくれ。
「じゃ、家教えてくんね?」
後頭部に衝撃が走った、ように感じた。
予想だにしないまさかの発言に、俺は血の気が引く。わなわなと唇が震えた。グリーンの意図が読めず、ぎゅっと喉が締め付けられるような気がした。
こんな夢のような展開があるものか、何かしらあるに違いない。
そんな想いが先行してどうしようもなくなる。黙ってしまった俺の様子に彼は首を傾げた。どうやら、何も変なことを言っていないつもりなようだ。
唾を飲み込んで、やっとのこと言葉を零す。
「な、何で」
「あ、そか。もしかして友達とか上げちゃいけない、的な?」
「とっ、友達……って」
「へ? え、俺とレッドはもう友達だろ?」
その笑顔に、心臓が爆発しそうになる。目を逸らせなくなる。顔の赤さなんて気にしている自分がバカに思えた。グリーンの誠実さを表すその純粋な双眸に打ち抜かれる。あぁ、ダメだ。
もうどうして、諦めるなんてことが出来ようか。
「今日、部活休みなんだ。お前がバイトすぐ行かなきゃいけないならいいけど、一緒に帰ろうぜ!」
見計らったように鳴り響いたチャイム音を背に、俺はただ首を縦に振った。
その後、必死に教室までダッシュして、俺とグリーンが同時に入ってきたクラスでどよめきが起こったことは言うまでもない。
どうか変な勘ぐりを入れられないことを祈りつつ、5時限目の授業へと突入した。
作品名:03:見誤ったオージェ効果 作家名:Cloe