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不満なんてあるわけないよ!

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不満なんてあるわけないよ!




折原臨也と言う人間について、帝人はわりと理解したつもりでいたと思う。
ちょっと(?)人より振り切れた行動を取りやすいことも、ああちくしょうかわいいなあ!と思える言動を不意にとることも、テンパると可笑しな方向に突き抜けることも、ある程度の覚悟していたし、どんと受け止めるつもりでいる。
だが、いくらなんでもこれは、一瞬言葉に詰まるくらい許して欲しいと思う。帝人はそんなことを思いつつ、真っ赤になって正座している目の前の恋人を見詰めた。
「えーっと・・・」
今しがた、この人はなんていったっけ?
「今日からここにお世話になりますって、どういう意味ですか?」
敢えて空気を読まずに問いかければ、臨也はもじもじと胸の前で両手の人差し指同士をくっつけた。今時少女マンガでも余り見かけない照れのポーズだ。
「ふ、ふふふふつつつ、不束者ですがっ、よろしくお願いします!」


いやいくらなんでもかみすぎだろう。


しかしここでツッコミを入れようものなら、帝人君に軽蔑されたあっ!とかって泣き出しそうなので、ぐっとこらえる。
「その、いろいろ考えたんだけどねっ!やっぱり俺の荷物全部持ってきたらここ入りきらないし、それにほら、やっぱり身一つで嫁入りって言うのがドラマチックかなって!」
「そ、そうですねこの部屋狭いですもんね。っていうか嫁入り!?」
「なんていうかほら、駆け落ちチックな?」
「駆け落ちぃ!?」
「流石に俺も帝人君のご両親にご挨拶に行って可愛がってくださいとか言う根性はないし、っていうか恥ずかしい!俺の発想が恥ずかしい!なにその可愛がってくださいって!受け入れられること前提的な!」
馬鹿馬鹿俺のバカ!唐突に叫びながらたたみの上を転がる臨也に、ぽかんとするのは帝人である。えーっと、えーっとつまり?言われたことをゆっくり租借して、ようやく結論に至る。
要するにあれだ。


プロポーズされたからマジで嫁に来た、ってことだ。


身一つで。
駆け落ちチックに。
ちょっと待て・・・ロマンチストにも程があるだろ。
「臨也さん、落ち着いてください」
「これが落ち着いていられるかい!貧しくも慎ましやかな2人のお城イズヒア!どこを向いても帝人君の生活感満載なここが天国か!狭いから夜は2人で布団を分け合ってみたりして!俺がお帰りって帝人君がただいまって言ったりして!ご飯にするお風呂にするそれとも俺?みたいな!」
「落ち着いて!ほんとに落ち着いて臨也さん!冷静をインストールして!」
「アンインストール♪アーンインストール♪」
「リアルに今の僕には理解できない!ほら、深呼吸!」
息を吸ってー!と叫ぶ帝人にしたがって、息を吸う臨也。そのままふーっと吐いて、それからキリリと表情を引き締めて。
「というわけで、不束者ですが」
きっちり、三つ指ついて頭を下げる。
「精一杯頑張りますので、か、かかかか、可愛がって、くださいっ!」
マジだ。こいつ、マジだ。
帝人はごくりと息を飲んだ。
一緒に住むのはいい、それはいい。っていうかそれ自体は割と嬉しい。でも、だめだろうここじゃ。冷静に考えてみろ、男二人で住むにはどう考えても狭すぎる。
「あのですね、臨也さん」
ぽふっとその頭に手をあてて、ゆっくりとなでつつ、帝人は小さな子供に言い聞かせるような口調で諭す。
「臨也さんと、同棲するのは、いいんですけど。やっぱりこの部屋だと、狭すぎると思いませんか?」
「どっ・・・どうせい・・・!」
がばっと顔を上げた臨也が、真っ赤になりつつ同棲同棲、と繰り返している。何を今更そこで照れるのか。なんだ、恋人同士が同じ家に住むのに、同居だとでも言うつもりか?だとしたらいい加減に本当に覚悟決めてくれマジで。
「だからね?提案なんですけど、臨也さんの家にしませんか?あそこなら、部屋が余ってますよね?」
「う、うん、余ってるけど、でも、それだと嫁入りっぽくないよ?」
あくまでそこに拘るらしい。っていうかプロポーズされたほうが嫁っていうのは、臨也の中で決定事項らしい。どうなのそれ、先に進むには僕が頑張るしかないってこと?襲えってフラグ?狩沢さんの言うところの襲い受けってやつですか?僕が!?
ああもう面倒臭い、もうそれでもいいよ!



「いいんです、「私」が嫁だって思ってれば臨也さんが嫁です。全世界の価値観など「私」が決めます」



きっぱりと言い切る帝人に、帝人君かっこいい!と目を輝かせる臨也。
いいのかそれでと思いつつ、クーラーも暖房もろくにないこのボロ家に2人で住むより、絶対に臨也のマンションのほうが快適に暮らせるのだから、ここは本気だして言いくるめなくては。
「そ、そっかあ!じゃあ表札は竜ヶ峰にするね!」
一気に表情を明るくした臨也の言葉に、まずそれなのか!と心の中で突っ込みを入れつつ、しかしまあそんなことはどうでもいいかと押し留める。
帝人は余り物もない部屋の中をぐるりと見渡して、引っ越そうと思えばすぐに済むな、と考えた。田舎にはなんていおう。ルームシェアするから家を出るって言っても、多少はお金を払わなきゃいけないだろうし。こんなときこそ正臣に口裏合わせて欲しいって頼むしかないか。困った時の紀田正臣、頼むよ親友!といつになく爽やかに思いつつ、帝人はこほんと一つ咳払いをして。
「というわけで、僕のほうが、不束者ですがよろしくお願いします?」
臨也の真似をして三つ指ついてみせれば、臨也は感動に打ち震えつつ帝人の手を握り締めた。なんかもう泣いてる。うれし泣きらしい。
「し、幸せにします!多分!」
「多分ですか?」
「おそらく!」
「おそらくぅ?」
「き、きっと!」
「きっとって臨也さん!?」
「うあ、あの、だから」
なんで断言できないんだ!と覚醒モードで睨みつける帝人に、臨也はぱくぱくと口をひらいてはとじて。ぎゅーっと目をつむってから深呼吸をして。
心のなかでカウントダウン。3・2・1、行け!


「ぜっ・・・絶対!」


精一杯の大声に、ようやく大きく頷いて、
「よし!」
よろしい!と帝人はにっこり笑い、その真っ赤な頬にキスをするのだった。

これにて、嫁入り騒動終結。