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動物の王国~エド、初めての諜報活動~

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その1


成人の儀を終え、今エドワードは正式にフィアンセとなったロイ・マスタングと共に、隣のまたその隣の「ハ・クロー王国」にいた。

動物の王国 ~「エド、初めての諜報活動」編~

「あぁ、あの子は大丈夫だろうか!?」
「いいかげん落ち着いてください、陛下」
「しかしだね、あの子はあんなに可愛いのだから…………ああぁぁぁ!!」
「落ち着いてくださいってばっ! ロイ様もご一緒なのですから」
「それだ!それこそが大問題なんだよ! 違う意味であの子が危ないっっ!!」

ダメだ。話にならない。

第1王子エドワードが初任務、つまり成人の証(諜報活動)に出かけてから今日で、まる3日。アメストリス王国ヴァン・ホーエンハイム陛下は、まるで使い物にならなくなっていた。
毎日王宮の廊下を行ったり来たりと、ウロウロ鬱陶しい事このうえない。しかも、突然「う、うっエド…ワード…ッ」心臓発作モドキが起きるらしい。
あと偏頭痛も。
はっきりいって政務どころではなく、王室の機能は完全停止状態。
だけど、心配なのは大臣たちも皆同じなのだ。
だって。
エドワード王子はむちゃくちゃ可愛いvvv のだ。大きな金色の瞳に眩い柔らかな金糸の髪。小柄な体はついつい抱きしめたくなる。
今回は変装を兼ねて髪を黒く染めてのお出かけなのだが、その黒髪の姿も新鮮で魅惑的。まさしく流れる緑の黒髪に貴方のハートは釘付け! である。
そして、問題の獣形のふわふわ毛並みの黄色ヒヨコ。
本人は嫌がっているが、掌に乗せたエドワードが「ぴよ」と小首を傾けて鳴いたりしたら。

「ぐぁばっ」と鼻血が出てしまうほどに、キュートでらぶりーな事この上無い。しかも、当の本人は無自覚ときている。これはA級犯罪より性質が悪い。

だから、人買いやひよこ売りにでも攫われやしないかと、それはそれはもうホーエンハイム王同様気が気でなく、この3日間でどれだけ大臣達の神経が磨り減ってしまった事か。
でも今の王の状態を見てしまったら、「我々が国政を何とかしなければっ」と、冷静になるしかない。

通常王不在の折は、第1王子であるエドワードが名代を勤める事になっているが、ただ今彼は嬉し恥ずかし初任務中。
ならば、第2王子のアルフォンスがいるはず。
―――いるはず、なのだが。
何故かこの3日間庭園に入りびたりで。
「ロイさんが兄さんに……する、しない、する、しない、する、しない、す…………やり直し」
何やらブツブツと花占いに没頭している。

だめだ。陛下同様使い物にならない。

もはや、この状況を打破できるのはあの御方しかいない。

「王妃さま、エドワード様がご帰還されるまでの間、王の名代をお願いできますでしょうか…」
っていうか、ぜひお願いします!

ズラズラ~とトリシャ王妃の足元にひれ伏す大臣達。

「まったく…あの人ったらしょうがないわねぇ。それにアルフォンスも、ね」
「おぉ!ではお引き受けくださいますか!?」
「ええ、私でよろしければ」
ふふ、と口元から笑みが零れる。
「お、王妃さま??」
「ねえ、エドワードは心身共に大人になって帰ってくるかしら。なんたって、あのロイ・マスタングと二人きりの旅。据え膳ですものねぇ。楽しみだわ」
心身ともにって!?
据え膳ってっ!
身もですか、身って体の事ですよねっ、王妃さま~~!!
赤くなったり青くなったりの大臣達を尻目に、「お赤飯を炊かないといけないかしらvv」なんて言いながら、トリシャ王妃は執務室へと行ってしまわれたのだった。

一方、その頃の据え膳第1王子エドワードといえば。

思いっきり、ロイと逸れてしまっていた。

「まったく、あの子はどこへ行ったんだっ!ここでちゃんと待っているようにと言ったのにっ」
ほんの少し、ロイが目を放した隙にどこかへ行ってしまって見当たらない。
と、そこへ聞こえてきたのは。

「ぴいぴいぴいぴい♪」

聞き覚えのある鳴き声で。
しかも、何だか随分楽しそうに弾んでいたりする。

「まさか、聞き間違えか?」
声のするほうに振り返ると、そこにはダンボール箱に詰められた無数のヒヨコと、怪しげなひよこ売りの男とが一名。
その中に、よりによってそのひよこ達の中にっ! 

恋人のエドワードが見事に混じっていたのだった。

箱の中では皆、それぞれに可愛らしく大合唱。でも、たくさんのひよこ中でも一際可愛い恋人の鳴き声。
そして、それはかなり嬉しそうにさえずっている。小さな体を弾ませ、もの凄く楽しんでいるようだ。
そんな何ともいえない微笑ましい光景が、ロイの目の前にあった。

あったのだが、その微笑ましい光景とは裏腹に、ロイのこめかみがピクピクと痙攣を起こす。
「ぴよっぴよっぴっぴぃ♪」
「…随分と、ご機嫌だね。……エドワードッ」
「びっ、ぴいッ!?」訳)げっ、ロイっ!?
「君は、こんなところで一体何をしているのかな?」

ロイは笑っている。にっこり笑ってはいるが、目は笑っていない。しかも、口元が少し引き攣っていたりしている。
それはそうだろう。大切な恋人がいなくなって焦っていたら、その恋人はヒヨコ売りの箱の中で、たいそうご機嫌に歌を歌っていたのだから。

そして、その恋人はというと。
「ぴぃ~」訳)こえ~。
エドワード、まったく反省の色なし。であった。