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動物の王国~エド、初めての諜報活動~

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その2


「ここで大人しく待っているんだよ」
と、エドワードが恋人のロイに言われたのは十数分前の事で。

ぽかぽか日当たりに良い公園内で待つ事10分。

「あ~暇だひまだ退屈だぁ」

まだ、ほんの10分しか過ぎていないのに、エドワードの忍耐は限界すれすれ。困った事に、ベンチに座っているのさえ苦痛のようだ。
そこへ現れたのは、自転車に乗ったどこか怪しげなおじさん。
そのおじさん、自転車を向かい側に止めると、荷台に2段重ねで積んでいたダンボール箱を丁寧に下ろし、なにやらガサゴソと準備中。

やがて、エドワードの目の前で、その箱が開けられる。
と、―――その中には。

ぴいぴいぴい

たくさんのヒヨコ達が詰まっていたのだった。


「かっわいい~~vv」

かっわいい~~vv と、思った瞬間にエドワードは変化してしまっていた。
そう、【ひよこ】に。
仲間を見て思わずの、うっかり変化。
本能とはいえ抑えが効かず勝手に変化なんて、未熟もいいところな第一王子エドワードである。

「変化」は他国に絶対に知られてはいけない、アメストリス王国の最重要機密で。
なのに、王族であるエドワードがおじさんの前で変化してしまったのだ。
まさに、【さあ、困ったどうしましょう!】なこの状況。

「ぴ、ぴぃ…」(訳)ど、どうしょう…

一瞬にしてエドワードの血の気が引ける。引くけど、やっぱり羽毛なので青ざめていても分からない。
でもこの時、おじさんはタイミングよく、たまたま余所見をしていたのだ。
つまり、【見ていなかった】という事。

セーフッ!セーフなのか!?
見られてないんだ!とにかく急いで走って逃げなきゃ!

と思うのに、突然の変化に動揺してしまいエドワードの体が動かない。何たって未熟ですから。

ぎゃ~!ダメじゃんか俺の体!動けよっ!!

気ばっかり焦って体は動かない。
【さあ、困ったどうしましょう!】な状況、再びだ。

おじさんがふと目線をもどすと。
そこには段ボール箱の傍で固まっているヒヨコが一羽。

「おや? 箱から出るなんて元気な子だな~」

ダメじゃないか、とエドワードを掴むと何と!?
いきなりひっくり返して、お尻の辺りをじっと見つめだしたのだった。

「ぴ、ぴよ!?」(訳:な、なに!?)

み、……みみみみみ見られた!?おっおおおお尻をっていうかあれを!ロイにさえまだ見せてもいないのにひよこ姿とはいえこんなおじさんにっ、

見~ら~れ~て~しまったYO!!!

成人の儀を終え、初めてのお仕事。
この初仕事を無事終了させ戻ると、めでたくロイとエドワードの婚礼の儀が執り行なわれる予定で。
そして、その夜は―――寝室で二人だけの初めての一夜を過ごす。
いわゆる、うれし恥ずかし【初夜】を迎えるのだ。

なのに何だよっ、俺のこの状況は!しんじらんねぇ~っ!!

おじさんにひっくり返され見つめられたたまま、エドワードは恥ずかしさで大パニックだ。
だけど、そんなエドワードにおじさんが気づくはずもなく。

「おっ、おんたか」
と、ぽいっと「男の子」と書かれたダンボール箱に入れたのだ。

放りこまれたそこは、【男の子ひよこ】ばかりの箱で。
『わ~、新しい子だ♪』
『あそぼ~』
と、フレンドリーな集団にあっという間にエドワードは囲まれてしまった。
しかも、
『可愛いねvv』とすりすりと寄って来る、おませなヒヨコが多数いる。
『えっ!? いや、俺男だっし!!』
『気にしな~い気にしない』
『俺には婚約者がいるんだよ!』
『僕の方が将来立派な鶏冠をつけた鶏になるよ♪』
いや、鶏じゃないっし…。と説明する間もなく、
『僕の方がっ!』
『抜けがけすんなよ!』
『おいっ、怯えてるだろ、やめろよな!』
『一羽で良い子ぶってんじゃねぇよ!』
ぴいっぴいっ!!と。
ひよこ達の間で、壮絶なバトルが繰り広げられた。

さすが、キュートでラブリーなアメストリス王国随一のアイドル様、第一王子エドワード。ひよこ世界でもモテモテなのだった。