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動物の王国~エド、初めての諜報活動~

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その3


「ぴっぴぴいっ!」とあまりの騒がしさに(しかも、何だか殺気まで感じたりする)、おじさんが箱を覗いて見てみると。

ひよこ達がドタバタと、バトルロイヤルを繰り広げている真っ最中だった。

動物の王国 ~「エド、初めての諜報活動」編~ その③

「何だなんだ、お前達は!!!」
ひよこ売りのおじさんは眉間に青筋を立て箱をガシッと掴むと、いきなりゆっさユッサと左右に箱を揺らし始めたのだ。
これにはひよこ達もたまったものではない。
「ぴぃ~い」
「ぴぃ~~~い」
情けない泣き声で、皆一斉に右に左にと箱の端から端まで、ひと固まりで流され寄っていく。まるでお団子状態。
ぴ~っ!
ぐるぐる目が回るまわるっぴ~~っ!

―――暗転―――

「やっと静かになったか」

『め、めがまわるっぴぃ』
『き…きもちわるいッぴぃ』

そんな団子状態なひよこ達に、無常にもおじさんからの最終通告が。

「いいか!けんかして怪我でもして傷がついたら売れないんだぞお前達! 売れ残ったら犬の餌にするぞっ!!」

ぴっ―――ッ!? 訳)まじ―――っ!?

おじさんは本気だ。
そしてひよこ達の驚愕も本物だ。

「少しはめんた達を見習え!」

めんた。
ちょっぴりお値段の高い女の子箱のひよこ達はといえば、なんとも慎ましい大和撫子風で皆大人しくお座りをしている。
「ぴよぴよ」と、控えめな鳴き声がまた愛らしい。
でもでも、でもね。
可愛さでは見た目も鳴き声も、やはりエドワードが一番なのだ。しかも、
『みんな、だいじょうぶか?』
心配気に小首を傾けるなんて、さらに愛らしさ度がうなぎ上りにUP、どこまでもUPし続けてしまいますYO。
『やっぱかわいいよなぁ~vv』
『うんうん♪』
おじさんに恐怖しながらも、女の子より愛らしくらぶりーキュートなエドワードに、おんた達は全羽もうすっかりメロメロでウキウキと弾みっぱなし。

ウキウキと弾みながら、
『なあケンカなんかしないでさ、みんなでこの子の歓迎の歌を歌おうよ♪』
『おぉ、それはいい考えだぞ!』

さっきまでのケンカは何処吹く風か。
全羽ノリノリに良いお返事の後、ダンボール箱の中で始まったのは可愛いあの子の為への大合唱で、そんなかわいいひよこ達のさえずりに、エドワードの気持ちが自然と高揚していく。

ぴいぴい~♪ぴっぴっぴぴぴい~♪

『わあぁ~vv すげぇ~~。俺もっ、俺も一緒に歌う♪』
『うん!一緒に歌おうvv』

エドワードを真ん中に挟んで更に高まる歌声と、弾むひよこ達の小さな体。もちろんエドワードだって、
『すっげぇ楽しい!!』
と、すっかりひよこ達に馴染んで気分爽快。

楽しくって楽しくって、もう歌って踊って、ご・き・げ・んvv
そこへ、
「…随分と、ご機嫌だね。……エドワードッ」
何とも低い、あまりにも低い恋人の声が聞こえたのだった。

にっこり笑ってはいても目がまったく笑っていない恋人に、エドワードはとにかく近況報告だ。
『いや、だってひよこ達がさ、あんまりに可愛かったんで』
「それで」
『え~と、気がついたら変化? みたいな』

「ぴよⅴ」訳)えへⅴ

小首傾き角度25度。
全生物対応、効果てき面率120%を誇るエドワード王子必殺技【ハートマーク付きで小首を傾げる】がロイを直撃した。

か、か、………可愛いすぎるぞエドワードッッ!!!

あまりの愛らしさに眩暈で倒れそうだ。
こんな技を食らってしまっては、もともとエドワードに激甘なロイの事、もう何もかも許してやりたい衝動に駆られる。
だけど、ここで負けてはいけない、いけないのだ。大人として恋人として、毅然とした態度を見せなくては男が廃る。
だから、奥歯が砕けるのではというぐらいに、ロイはぐっと歯を食いしばり必死に耐えた。とにかく耐えて耐えて、遂にその必殺技を耐え抜くという初の快挙を成し遂げた。
涙ぐましいその姿に大臣達がこの場にいたならば、少しはホーエンハイム王にも見習ってもらいたいと思ったに違いない。
が、しかし。
必殺技に耐え抜く事に集中するあまり、大切な事をロイは忘れてしまっていた。
それは―――。

「君は自覚が足りなさ過ぎる」
『で、でも見られなかったんだから結果オーライじゃん!』
「君には反省という言葉は無いのかね!」

ちなみに、アメストリス人同士であれば変化後の会話もできる。どんな動物になっても、不思議な事に言葉が通じるのだ。
でも、それはあくまでも【アメストリス人】同士での事で、今ロイがいる場所はアメストリス王国内ではなく、隣のそのまた隣のハ・クロー王国内の公園。
そう、他国なのだ。
しかも公園という公共の場所で、犬のお散歩や親子連れ等それなりに人通りがあり、エドワードの変化に目撃者が居なかったのは奇跡としか言いようがない。
そんな状況下でのロイとエドワードの会話。
だから当然、

「ママ~、あのおじちゃんひよこさんとお話してるよ~、すご~い!」
「見、見ちゃだめよ!!」

なんて反応をする親子連れがいるのも当たり前の事。
だって、エドワードの声は周りには「ぴいぴい」としか聞こえていないのだから。

お、おじちゃん!? この私がおじちゃんっ!!

『ロイ~気にすんなよ、あんな小さな子からしてみたら仕方がねえよ、な?』

ロイのショックは相当のものなのに、エドワードの慰めにもならない言葉がとどめをしっかり刺していた。
でも、問題はそこじゃなくて。

「まあ、あんなにステキなお方なのに……」
「春になると多いのよねぇ~」
「なまじ良い男だから…ほんと、残念だわ」

しゃがみ込みダンボール箱のひよこに語りかける三十路男。
その言動は公園内の人々に、すっかりと【不審人物】と認識されてしまっていた。
ロイ・マスタング、一生の不覚。


でも落ち込んでいる暇はない、何故なら。

「ぼく、このひよこがほしい!」
「毎度っ150センズだよ!」※センズ各国共通貨幣

そんな会話が聞こえたかと思うと、ひよこ売りの親父が掴んだのは事もあろうに、エドワードだった。

「ぴっ、ぴよ!?」訳)えっ、俺!?
「まっ、待ちたまえっ! そのひよこは私のだっ!」

思わず叫んだロイに親父はもちろん、周りの目も冷ややかだ。

「にいちゃん、ひよことのお喋りなんて営業妨害もいいところなのに、商売の邪魔は困るな~」
「まあ、子ども相手になんて大人げないのかしら」
「ほんと、なまじ良い男だから」(以下略)

痛い。
あまりにも皆の視線が痛い、痛すぎる。ロイが痛い視線に冷や汗をかいていると。

「わぁ、かわいいな♪ ぼく大切にするよ!」
「宜しゅうございましたね、坊ちゃま」
「うん!」

なに!? い、何時の間に!!

気がついたときには時すでに遅く、代金と引き換えにエドワードは男の子の手の中に納まっていた。
しかもお付きの男二人に【坊ちゃま】と呼ばれ、ピカピカ毛並みのお馬に引かれた黒塗りの馬車に乗りこんでいく。

「ぴぃ、ぴぃ~っ!!」(訳:ロイ、ロイ~ッ!!)
「エ、エドワード!!」

エドワードを見失ってはいけないっ!
もはや不審者だと思われようが、そんな事はどうでもいいっ!!