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動物の王国~エド、初めての諜報活動~

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その6



「ぴい~っ」 訳)う~っ

エドワードはセリムに向かって唸った。けん制バリバリに唸った―――つもりだったけれど。

「なに、ぴよちゃん? かわいいvv」

まったく効果なし。全然だめじゃん、な状態のあげく、
「そうだ! 食後のお散歩をしようね♪」
またもや両手に抱えられスキップに揺られて、セリムとお散歩に行くはめに。

「ぴい~っ、ぴっぴぴっぴい~!!」 訳)こらあ~っ、俺は怒ってるんだぞ~!!
「そう、ぴいちゃんもお散歩が楽しみなんだね♪」
「ぴっぴぴぃ~~!」 訳)ちっがう~~!!

気づいてもらえないどころか、エドワードの怒りは見事に空回りだ。
そして、セリムが上機嫌でスキップランランしながらエドワードを連れてきてくれた場所といえば。

「ぴ~~~~い…」 訳)わぁ~~…

王族のエドワードさえ思わず感嘆の声を上げてしまう。
そこは別荘内にあるセリム専用庭園で、まるで一つの農園のような作りの、それはそれは見事な庭園なのだった。
小高い丘に小さな池のほとりには水車小屋が回っていて、水鳥達が気持ちよさそうに水面を漂っている。
その様子にエドワードの瞳がきらきらと輝く。
「ぴぴぃ~!!」 訳)俺も~!!

気がつけば今度は池にダイブ。ジャブジャブと顔を水面につけると、とっても気持ちが良くて、そのままご機嫌にスイ~スイと水面を泳ぐ。

あぁ、哀しきかな鳥の習性。
何か大切な事を忘れていますよ、王子様。

ひとしきり泳いで、ハタッと気づく。
なに気持ちよく泳いでいるんだよっ、俺! ダメじゃんか俺っ!

ついつい我を忘れてしまった自分に呆然としてしまう。でもセリム的には、ぼ~としながら水面に浮いているようにしか見えない。
見えないからもちろん、
「ふふ、ぴよちゃんって、ほんと可愛いなvv」
何をしても、とってもキュートな姿にしか映らないらしい。

そんなセリムの前を何かが横切った。
「えっ!? 大きな黒猫?」
残念、外れ。
ちょっと的外れな事を考えてしまった僅かな隙が、大変な状況を作ってしまう。
セリムはもちろん側近達でさえも対処できないほどに、それはあまりに一瞬の出来事。

池の畔にいるのは、一体どこから入ってきたのか。
闇を落としたかのような見事な黒豹が、しなやかに動く。
そして、その黒豹の口に銜えられているのは――――セリムの悲鳴に似た叫びが農園に響いた。


「ぴ、ぴよちゃんっっ!!」

すかさず側近二人が銃口を黒豹に向けるが、
「ダメだよ!ぴよちゃんが噛み砕かれてしまうっ!」
セリムの制止によって撃つ事が出来ない。

黒豹の口の中にすっぽりと入ってしまっているぴよちゃん。
黒豹の微かに開かれた口の隙間から見える、黄色い羽毛はぴよちゃんのもの。
ほんの少し、黒豹が口を閉じれば「美味しく頂きます!」になってしまう。
まさしく一触即発な状態。


そんな中、黒豹はまるで側近達と間合いを取るようにゆっくりと歩を進めると、一気に庭園を駆け出す。
本気で疾走する黒豹に誰も追いつくことができない。

セリムの泣き声が庭園に響く。

(ちょっと、こんな別れ方は可哀相だったかな…)

遠くになっていくセリムの自分を呼ぶ声に、エドワードの良心が少しだけズキズキする。とんでもない計画を親子で練っていたとはいえ、セリムはまだ10歳の子供で、ひよこ姿のエドワードを本当に可愛がってくれたのだ。

あ~っ、でもでもダメダメっ! ロイの敵は俺の敵なんだから! で、でもでもちゃんとお別れとケーキのお礼を……って何考えてんだよ俺!

と、エドワードなりに必死に考えを巡らせていたら、ころりんと草の上に転がされた。

『うひゃ?』
『ほら、泉だよ。早く体を洗いなさい』
『何で?』
『おやおや…君は私の口の中にいたんだよ。羽毛がすっかりベトベトで、そのまま変化を解いたら大変なことになるだろ?』

やっと見つけた恋人に今すぐ抱きつきたいけど、ロイは変化を解きながらも我慢した。そしてエドワードも、ひよこの姿ではロイに抱きつけない。
ぴよぴよと水辺に近づき、水に浸かったとたん、エドワードは変化を解く。

「あ~やっぱ気持ちいいや!」

水に濡れる金色の髪が、頬に首に肩に背中にと、しっとりとまとわり付いていく。
そして。
着ていた白のシャツが透けて、いやおうなくエドワードの身体のラインを強調している。

「随分と………刺激的な姿だね。私の忍耐を試しているのかい?」
「へ? なに??」
「いや、なんでもないよ」

泉に入れと言ったのは自分だ。ロイは「失敗だったか、いやでも…」思わず苦笑してしまう。
そんな年上の恋人の心中なんて、年下の愛おしい子供はまったく気づかない。気づかないし考えもしないから、
「ロイッ!!」
いきなり、そのままの格好で飛びつくなんて事をしてくれたりするのだ。

「会いたかったっ!!」
「……あ~、私もだよ、エドワード…」

エドワードを抱きしめながら、ロイは遠くの空に視線を泳がせた。

トリシャ王妃が見ていたら「以外に甲斐性がないのね」と、間違いなくおっしゃるに違いない。
でもロイはロイなりに【婚礼の儀まで、何とか耐えてみせる】という【大人の男】の信念と理性でもって踏ん張っている。
色男のくせに、本気で惚れた相手にはとことん弱いようだ。


一方、セリムが大泣きしロイがひたすら我慢していた、その頃の別荘内では。


「セリム様は、まだか……」

思いっきり、皆に忘れられているハクロ陛下がいた。