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奇跡の鐘の音

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 眼下に見える黒い翼に、サリエルは空中で動きをとめた。神の祝福を失った翼は黒く染められ、髪も別人かと思うような漆黒に変化していた。
 黒い翼と、頭に生えた二本の角が、彼が悪魔だという証拠だった。
「ベールゼ、ブブ……」
 声が喉に張り付く。呼びかけに、ベールゼブブは空を見上げ、今まで目標物としていた鴉達を見限り、サリエルの元へ舞い上がった。
「久しぶりだな、サリエル……」
「ベールゼブブ」
「お前がここにまで来るとは、計算外だったが。まあいい。歪みはもう、止められん」
 ベールゼブブの背後で歪みが爆発し、竜巻のような渦を作り上げた。天を裂き、煉獄の空は荒れ狂った。
「っ、やめろ。こんなことをして、なんの意味があるのだ、ベールゼブブっ」
「美しいだろう?サリエル。神の歪みが、この世界を壊すのだ。お前もわかっているはずだ。神への矛盾が世界を崩壊へと導く」
 ベールゼブブの邪悪な笑みに、サリエルは面影を重ねようとした。少しでも、あの頃のベールゼブブを取り戻してもらいたいと願う。
「復讐のつもりなのか?このままでは、天界はおろか、地獄までが崩壊するぞ。わかっているのか」
「わかっている。私は、天界の征服にも、地獄の繁栄にも興味は無い」
「ベールゼブブっ」
「私は、神の居場所をついに見つけた。神は天にも地にも居ない。この煉獄の地にこそ居るのだ。我らがあの時求めた道は、ここにあるのだよ、サリエル」
 共に行かないか、と迷いの無い目で見詰められた記憶がサリエルに蘇った。
「お前は、再び神に問おうというのか」
「ふん、問うなど、もう必要が無い。私は神を殺すためにここに来た」
 天使であったベールゼブブは完全に消えてしまったのだと、サリエルは刃を構えた。
「もう、あの頃のお前は、居ないのだな」
「サリエル」
「私の名を呼ぶな」
「……私を忘れてしまったわけではないのだろう?サリエル」
「神に刃を向けるものを、私は許さない。天使の一人として、この命失おうとも、止めてみせる」
「愚かな」
「せめて私の手で葬ろう。友として、最後の手向けだ」
「サリエル」
「呼ぶなと言っている!」
 辛かった。ベールゼブブの変貌に、サリエルは何も言えない。心まで堕ちてしまった友人を、救う方法は一つだ。
 自らの手で命を奪い、そして……。
「何故、神をっ」
作品名:奇跡の鐘の音 作家名:七月かなめ