二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

奇跡の鐘の音

INDEX|15ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

「神が一度でもお前を愛したことがあったか?むしろ、愛をお前から奪ったのが、神というシステムだ」
 激しく打ち合い、翼が舞い上がる。
「黙れっ」
「答えられぬではないか、サリエル。お前も気付いているのだろう?神はどこにも居ない」
「世迷言を!」
「だが、事実だ。この世界に居るのは神ではない。熾天使達が作り出した、神という擬似システムだ。だから私はそれを壊す。
 ありもしない神に身をささげ、何も与えられず、何かを得ることすら許されなかった」
 刃同士が近距離でぶつかり合い、サリエルは間近にベールゼブブの瞳を見た。
「サリエル」
「ベー、ルゼ、ブブ……、お前は、狂っている」
「そう。狂っているよ。天界から堕とされたあの時からずっと、この日、この瞬間だけを夢見てきたのだからな。サリエル」
「……暴力の夢だ。おぞましい」
「そうだな。私は天使であるころ、何も出来ずにいた。だが今は違う」
「心まで、悪に堕ちたのか。私の知っているお前は、もうどこにもいないのか」
「サリエルっ」
 力の差はあまりに大きかった。サリエルは本気でベールゼブブを殺すことなど、初めから出来なかった。むしろその刃を受けたいとさえ考えるほどだ。
 それがせめてもの償いだと、長い年月はサリエルを苛み続けた。
 音を立てて、サリエルの武器が割れる。
「あの時、許されなかったことがもう一つある」
「っ」
 答えを得る前に、サリエルの胸は鋭い刃に貫かれていた。
「っあ、っ……!」
「サリエル」
 呼ぶ声が、あまりに優しくて、サリエルは目を見張った。そこには、以前の面影そのままの、ベールゼブブの眼差しがあった。
「ベル……ゼ……」
「私は、ずっと……、こうしてお前と口付けしたかった……」
「な……」
 唇が厳かに重なった。癒す意味の口付けしか知らないサリエルは、入り込んできた舌に、脅え、震え上がった。
「ん、っ……ぅ」
 血の味が捏ねられ、舌を吸い上げられる。胸の中が熱く燃え滾り、求めていた愛に、サリエルはようやく解放された。
「っは、……っ、ベールゼ、ブブ……」
 離れたくない、と口にすることは出来なかった。流れ落ちた血が、サリエルの命を急速に奪いつつあった。
「お前は、知らなかったのだろうがな……」
 顎をなでる指が優しい。サリエルは時間を取り戻し、ようやく再開した愛おしい共の名を、呼んだ。
作品名:奇跡の鐘の音 作家名:七月かなめ