奇跡の鐘の音
サリエルの手を恭しく取り、ベールゼブブは歩き出した。
体は重く、背の翼は重荷にしかならなかった。飛ぶことの出来ない翼は、枷だった。
「お前は美しいままだな、サリエル」
「突然何を言い出すんだ」
「……翼が失われても、お前は美しい。愛しいよ。お前が」
「何度言葉にしても、足りないな」
「愛している」
「まるで別れのように言うのだな」
「離しはしない」
門は、すでに目前に迫っていた。
奪うようにベールゼブブはサリエルの体を抱きしめ、翼ごと、腕で抱き潰した。
「……もう二度と、この手は離さない」
「後悔は、もうしない。この手は、お前のものだ。体も心も、すべてお前に……」
「私も誓おう」
二人は誓い合いながら、光の門の中へと姿を消した。